パリオリンピックの柔道では、日本勢の金メダルにわく一方、誤審騒動なども相次いだ。専門家は、日本勢の戦いぶりをどう見たか。「男子編」は、天理大男子監督の穴井隆将氏による「プロの視点」。男子全階級と混合団体をまとめました。 - 日刊スポーツ新聞社のニュースサイト、ニッカンスポーツ・コム（nikkansports.com）。
豪快な内股で日本男子重量級の柱として活躍。2012年ロンドン五輪男子100キロ級代表。世界選手権は2009年に3位、2010年に優勝。体重無差別で争う全日本選手権は優勝2度。奈良・天理高、天理大、奈良教大大学院出。2014年４月から天理大男子監督。39歳。大分県出身。人生を懸けて挑んだ五輪。気持ちの切り替えの難しさは計り知れない。メダルが遠のいたと感じたが、そこから常識を覆す底力を見せてくれた。準々決勝までは硬さもあって、本来の姿ではなかった。攻めの強さがあっての永山で、技を出した3位決定戦に顕著に現れた。価値のある銅メダルだった。
試合後、インタビューで周囲への感謝の言葉があった。家族や応援してくれる方への思い。誰かのために闘うことの大切さを教えてくれて、人間の根源の強さを感じた。不運では片付けられないものをはね返す姿に、心を打つものがあった。野村忠宏の3連覇を狙える 阿部一二三の時代が到来した。次元が違い、本当に隙がなかった。２連覇へのプレッシャーや妹が負けたことなどいろいろあったが、一切動揺しない強さがあった。「俺が勝たないで、誰が勝つんだ」という圧倒的なオーラで、観客も味方につけた。既に柔道史に残るような大選手になっている。 右組みで相四つの場合は、左手で相手の袖を持つのが速い。けんか四つの相手に対しては、釣り手を封じるのが速い。組み手を徹底されると、相手は攻め手を欠く。闘いにおいて攻撃だけを考え、防御を忘れてしまうと負ける。阿部一はディフェンスも重視し、相手が仕掛ける落とし穴を埋めてから攻撃に入っているので盤石だ。野村忠宏さんの3連覇を狙える権利を、ただ一人もっている。あえて課題があるとすれば、伸ばすところがないということ。研究されても、その上を行く強さをいかにキープするかだと思う。
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