パリオリンピックの柔道で、日本選手たちが躍動した。男女各7階級のうち、個人戦では7人がメダルを獲得した。その陰では、家族、恩師らが選手を支え続けてきた。それぞれのメダリストと、近しい人たちの物語を紹介する。 - 日刊スポーツ新聞社のニュースサイト、ニッカンスポーツ・コム(nikkansports.com)。
躍動の裏には、試合前のルーティンとなっている姉とのLINE(ライン)があった。日本第1号の金メダルを手にした女子48キロ級の角田夏実(31)。パリでの5試合も全て姉からの?咤(しった)激励を受けて勝ち進み、家族と喜びを分かち合った。きちんとして計画的な姉と自由気ままな妹。「性格は正反対だけど、お姉ちゃんのことが大好きで、常に一緒にいたがっていた」。母五都子さん(64)は、小さい頃の角田と姉真実さん(36)をこう振り返る。ただ小2になって父佳之さん(60)の勧めで地元の千葉県八千代市の警察署で柔道を始めたときは、真実さんも中学の部活で忙しくなり、あまり話すことはなくなった。「ガチャガチャした相手で嫌だ」「夏実の方が全然強いから、力で押さえつけたらいいよ」「そうだね、そうする」。こんなやりとりが試合の直前までずっと続く。「次だ、行ってきます」。こう送って畳に立つと、アスリートの顔に変わるのだという。当初は重要なときだけだったが、今では全ての試合前のルーティンだ。「リアルなアドバイスではなく、気持ちの後押しをしてほしいんだと思う」と真実さん。角田も「いつも安心して試合に臨める」と話す。
一度、夜中にあった海外での試合の際にやりとり途中で寝落ちしてしまい、「お姉が寝たから負けたんだよ」と責められたことも。今回の大会前は「1回戦から苦手な相手で嫌だなという感じだったから、やられたらやり返せばいいよ」と強気の内容で励ました。表彰台の真ん中に登った娘を見て「ここまで諦めずやってきて本当に良かった」と佳之さん。階級を変更するなど道は険しかったが「最初で最後のオリンピック」(佳之さん)は、家族4人で最高の結果を勝ち取った。柔道男子60キロ級で銅メダルを獲得した永山竜樹(28)は、準々決勝で不本意な形で敗れたが「支えてくれている人のために、手ぶらでは帰れない」と持ち直した。粘りの柔道の原点は、小学生時代に通ったプレハブの小さな道場だ。
北海道岩見沢市の住宅街にある「玉置塾」。自身も選手だった玉置新さん(57)が、娘らの練習のため自宅裏庭につくった15畳ほどのプレハブ小屋だ。ここに通う選手が大会で好成績を収めているのを見て、小2の永山を父親が連れて来たのが始まりだった。最初の印象は「真っ白」。悪い癖がついておらず、吸収が早い。そして一度覚えると磨き上げる職人のようなタイプだった。風邪をひいて1週間ほど休んだ時、父親に撮影してもらった動画を見て自習し、休み明けでちゃんと動けるようになっていたこともあった。男子60キロ級3位決定戦でトルコ選手(左)を破り、手を貸す永山竜樹 玉置さんは約10年前に難病の広範脊柱管狭窄(きょうさく)症を患ったが、熱血指導は変わらない。プレハブ初のメダリストに輝いたまな弟子に「目指していたメダルの色とは違うが、負けた後の試合は気持ちが入ってナイスファイトだった」と、ねぎらった。柔道女子57キロ級の舟久保遥香(25)は、得意の寝技を武器に大舞台に挑み、銅メダルを獲得した。県外から誘いがあっても地元に残り磨いた技。周りが心配するほどトレーニングに励む練習の虫は、本番まで1年を切ったタイミングで寮を出て1人暮らしを始め、自分と向き合い続けた。
柔道との出会いは6歳。友達がやっていたのに刺激されて興味本位で始めた。山梨県富士吉田市の自宅から約1キロ離れた道場まで毎日走って通い、基礎体力を養った。とにかく柔道が好きで、練習を頑張り過ぎることもあったと父親の元孝さん(69)は振り返る。
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