石炭や石油といった化石燃料の使用増などに伴い、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量は世界全体で増え、地球温暖化が進む。北極の海氷は減り、今後、夏の間は解けてなくなるとの予測も。気候変動のリスクを軽減するため、国際枠組み「パリ協定」は、気温上昇を産業革命前から1.5度にとどめる目標を掲げる。各国の対策強化に向け、11月にアゼルバイジャンで開かれる国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)でも議論される。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021~23年に公表した報告書によると、20世紀以降、世界のCO2排出は大幅に増え、世界の年間平均気温は既に産業革命前から約1.1度上昇。23年の世界の平均気温は1891年の統計開始以降一番高くなった。東京大大気海洋研究所の吉森正和准教授によると、北極は温暖化の影響を特に受けやすく、気温は地球平均の数倍のスピードで上昇。人工衛星の観測データなどによれば、海氷は通年で縮小している。
吉森氏は海面上昇を念頭に「北極の変化は、さまざまな形で北極外にも影響し得る。中緯度の日本に住むわれわれも、北極に住む人と同じ緊張感で見守りたい」と指摘。「北極の急激な変化は温暖化に付随しており、地球規模で対応を考える必要がある」と強調する。IPCCは、世界の気温上昇を1.5度にとどめれば、人類に影響する気象リスクを抑制できると指摘。国際社会はパリ協定に基づき、「1.5度」の共通目標を掲げ、温室ガスの削減に取り組む。 各国のエネルギー政策に直結するため、道のりは容易ではない。昨年ドバイで開かれたCOP28では、30年までに再生可能エネルギーの発電容量を世界全体で3倍にする方針を打ち出しており、COP29ではその達成方法が議論されるが、どこまで具体策に踏み込めるかは未知数だ。
化石燃料を大量に使う先進国と、干ばつや海面上昇など気候変動の影響に苦しむ途上国の対立も長年の課題。途上国がこうした影響に対処できるよう、COP15では先進国が年間1000億ドル(約15兆円)を途上国に拠出する気候資金の目標を掲げた。25年にはこの期限を迎える。COP29では同年以降の拠出方法などを話し合うが、曲折が予想される。
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