午前はサッカー・午後は棚田でコメ作り…プロリーグ目指す異色クラブ スポーツ
「1対1、勝負!」。晴天に恵まれた4月15日、同県長岡市の長岡ニュータウン運動公園のグラウンドで、パスを細かくつなぎ、相手守備をかわしてシュートを放つ選手たち。試合形式の練習に汗を流す姿には気迫がこもっていた。 クラブは、現代芸術の祭典「大地の芸術祭」の運営など、地域活性化に取り組むNPO法人「越後妻有里山協働機構」が2015年に発足させた。選手にサッカーに打ち込んでもらいながら就労の機会を提供し、農家の後継者不足も解決するという発想で生まれた。 設立から6年目の昨季、県リーグに初出場し、5戦全勝で優勝。昇格を勝ち取り、今季は北信越リーグ2部で戦う。ゆくゆくはプロリーグ入りを目標に掲げる。発足当初からのメンバーでFW石渡(いしわた)美里選手(27)(兵庫県出身)は「今季も優勝してどんどん上がっていきたい」と意気込んでいる。 選手は午前中にサッカーをし、午後にコメ作りをする。加入当時、農業は全くの未経験だった石渡選手は「大学の先生にクラブ設立を教えてもらい、見学に来た。地元の人に家族みたいに優しくしてもらったのがうれしくて加入を決めた。でも最初は、なれない農作業に毎日半泣きだった」と振り返る。 耕作放棄地の棚田は狭く、大きな機械を使えないことも多い。土をならす作業は人力で行ったが、力の入れ方がわからず途方に暮れたことも。地元住民にノウハウを教わり、やっとの思いで収穫したコメの味は格別で、「甘みが強くおいしかった」。 メンバーは当初、石渡選手と主将でMF大平理恵選手(27)(青森県出身)のわずか2人だった。その後、入団した選手もいたが、慣れない土地での生活で長続きしなかった。市内の他の女子チームに交ざって試合や練習をする日々。大平主将は「『2人でどうやってサッカーするの?』と地元の人に心配された」と笑う。 「どうしたら(選手に)十日町に移住してもらえるのか」と考え、取り組んだのは暮らしの環境整備だった。食事面でのサポートが必要と当時の監督に伝え、大地の芸術祭の拠点施設「農舞台」内にあるレストランで栄養バランスの整った食事を提供してもらうようにした。疲れがたまらないうちに練習できるよう、農業は午後に取り組むようにし、仕事を終えてから練習する他の社会人チームとの差別化を図った。人数が増え、農繁期以外は芸術祭作品の維持管理を担当するなど役割も広がった。今年加入したMF山下由衣選手(22)(大阪府出身)は「一からコメを作ったことがないので楽しみ」と声を弾ませ、GK木村珠奈選手(23)(奈良県出身)は「メンバーや地元の人が優しい。このチームで上に行きたい」と意気込んでいる。昨季は新型コロナウイルスの感染拡大で、全試合無観客で行われた。今季10試合は現状、観客を入れて行う予定で、このうち4試合は同市でのホームゲームだ。石渡選手は「十日町の一員としてコメ作りのバトンをつなげながら、サッカーで地元の人を元気にしたい」と話している。.
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