【逍遥の記(25)】「緑の野原をうたいたかった」 時空超えて生きる言葉 新川和江を悼む

日本 ニュース ニュース

【逍遥の記(25)】「緑の野原をうたいたかった」 時空超えて生きる言葉 新川和江を悼む
日本 最新ニュース,日本 見出し
  • 📰 sakigake
  • ⏱ Reading Time:
  • 35 sec. here
  • 2 min. at publisher
  • 📊 Quality Score:
  • News: 17%
  • Publisher: 51%

詩人の新川和江が8月10日、心筋梗塞のため死去した。95歳。年齢からいえば、生をまっとうしたということになるのだろうが、悲しみがひたひたと押し寄せてくる。

取材を申し込むと、自宅近くの蕎麦屋に来るように言われ、カメラマンと2人で出かけた。行きつけの店らしく、注文しないでインタビューをしていても文句を言われることもない。4時間以上も話を聞いた。取材後は「もっと食べなさいな」と促されながら食事をともにした。あいさつと軽い雑談が済むと、すぐに戦争の話になった。10代の新川は戦時中もひそかに詩を書いていた。恩師の西條八十に出会えたのも、皮肉にも「戦争のおかげ」だった。

童謡詩人として有名だった50代の西條が、新川の住む茨城県絹川村(現在の結城市)に近い下館町(現在の筑西市)に疎開してきたのを新聞記事で知り、詩作ノートを持って訪ねた。以来、自転車で通った。自作の詩を読んでもらうだけでなく、西條が書いたアルチュール・ランボーの論文を写す作業も、頼まれて懸命に取り組んだ。「わたしを束ねないで/あらせいとうの花のように/白い葱のように/束ねないでください わたしは稲穂/秋 大地が胸を焦がす/見渡すかぎりの金色の稲穂」「こういう気持ちは少女の頃からあった」と明かした。「女は、子どもの頃には親の、結婚したら夫の、年を取ったら子どもの言うことに従わなければならない。でも、そんな生き方ってなんだか悲しい。大人になったら一人の人間として広々と生きてみたかった」

束縛への抵抗の意思を示す言葉が繰り返されるのに、詩全体から頑なな印象は伝わってこない。否定し、拒否するだけでなく、明るく肯定的な自己イメージを提示して、上書きしているからだろう。第1連なら「わたしは稲穂」。その後は「羽撃(はばた)き」「海」「風」「終りのない文章」。詩人の吉原幸子と、女性を主体とする季刊詩誌「現代詩ラ・メール」を創刊したのは1983年のことだ。「詩を書くことによる精神の自立を目指しました」と振り返った。編集の実務に携わった棚沢永子が2023年8月、書肆侃侃房から出版した「現代詩ラ・メールがあった頃」は、この詩誌の誕生から終焉までの日々をつづる。懐かしさや哀惜にとどまらず、当時の葛藤や混乱、時には怒りまで隠さず書いていて、読ませる。

このニュースをすぐに読めるように要約しました。ニュースに興味がある場合は、ここで全文を読むことができます。 続きを読む:

sakigake /  🏆 88. in JP

日本 最新ニュース, 日本 見出し

Similar News:他のニュース ソースから収集した、これに似たニュース記事を読むこともできます。

【逍遥の記(24)】隔絶された時間と場所で自我と向き合う作家 村上春樹国際シンポと「八月の庵」【逍遥の記(24)】隔絶された時間と場所で自我と向き合う作家 村上春樹国際シンポと「八月の庵」東京の早稲田大学で7月13日と14日の2日間にわたって開催された「2024年第13回村上春樹国際シンポジウム」(台湾・淡江大学村上春樹研究センター主催)のテーマは「村上春樹文学におけるウェイ・オブ・…
続きを読む »

涙をのんだ男子バレー日本代表 パリ五輪最高視聴率23・1%記録! 4強あと一歩から…伊に逆転負け涙をのんだ男子バレー日本代表 パリ五輪最高視聴率23・1%記録! 4強あと一歩から…伊に逆転負け男子バレーボールで52年ぶりの五輪金メダルを目指した世界ランキング6位の日本は5日、同2位で22年世界選手権王者のイタリアと準々決勝で対戦し、2―3(25―20、25―23、25―27...
続きを読む »

パリ五輪 前半の競技視聴率トップは男子バレーアルゼンチン戦 世帯17・9% 念願の1勝、判定に波紋もパリ五輪 前半の競技視聴率トップは男子バレーアルゼンチン戦 世帯17・9% 念願の1勝、判定に波紋も52年ぶりの五輪金メダルを狙う世界ランキング2位の日本は、同8位のアルゼンチンと対戦。セットカウント3-1(25-16、25-22、18-25、25-23)で東京五輪銅メダルの強敵… - スポーツニッポン新聞社の公式サイト(www.sponichi.co.jp)。
続きを読む »

【パリ五輪】ボクシング女子の性別騒動 アルジェリア選手に「謝りたい」と途中棄権のイタリア選手【パリ五輪】ボクシング女子の性別騒動 アルジェリア選手に「謝りたい」と途中棄権のイタリア選手パリ・オリンピック(五輪)のボクシング女子66キロ級の2回戦で、試合開始46秒で棄権したアンジェラ・カリニ選手(25、イタリア)が2日、試合直後の自身の対応について、対戦相手のイマネ・ケリフ選手(25、アルジェリア)に「謝りたい」と語った。
続きを読む »

【東京V】鹿島から18年11カ月29日ぶり勝利!山見大登がクラブJ1通算800点目含む2発【東京V】鹿島から18年11カ月29日ぶり勝利!山見大登がクラブJ1通算800点目含む2発<明治安田J1:東京V2−0鹿島>◇25日◇第28節◇味スタ東京ヴェルディFW山見大登(25)がクラブのJ1通算800点目となるゴールを決めた。鹿島アントラーズ戦の後半18分、DF綱島の...
続きを読む »

【日本ハム】「やったぜ!」清宮幸太郎、両親の前で「絶対捕ってやろう、打ってやろう」攻守で貢献【日本ハム】「やったぜ!」清宮幸太郎、両親の前で「絶対捕ってやろう、打ってやろう」攻守で貢献<日本ハム5−3ソフトバンク>◇25日◇エスコンフィールド日本ハム清宮幸太郎内野手(25)が、新庄監督就任後最多タイの60勝となる白星に攻守で貢献した。初回1死一、二塁、4...
続きを読む »



Render Time: 2025-02-25 04:58:29