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【こんな人】今季限り引退の田中史朗、意識が飛びかけてもタックルに行った「ブライトンの奇跡」

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【こんな人】今季限り引退の田中史朗、意識が飛びかけてもタックルに行った「ブライトンの奇跡」
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ラグビー日本代表でW杯3大会出場のSH田中史朗(39)が24日、今季限りでの現役引退を表明した。都内で記者会見し「将来的に日本代表のヘッドコーチ(HC)をやってみたい」と...

都内で記者会見し「将来的に日本代表のヘッドコーチ(HC)をやってみたい」と宣言した。所属するリーグワン2部東葛で入れ替え戦を含めた4試合を残し、まずは1部昇格へ注力。引退後は東葛のアカデミー指導を軸に、第2の人生に向かう。時に衝突を恐れず、日本ラグビーをけん引した功労者が、新たな夢を追う。「ブライトンの奇跡」が起きたあの日のピッチで、顔をゆがめて見たワンプレーがある。後半21分の失点シーン。185センチ113キロのフッカー・ストラウスに、166センチの男は正面からタックルに入った。理不尽にも見える体格差で吹っ飛ばされ、後方へ1回転。そのままトライまで持っていかれた。「意識が飛びかけていた」。なお立ち上がり、再びタックルにいく。絶対に折れない心。胸が締めつけられた。 ラグビー界を変えたあの日を迎えるずっと前から、楕円(だえん)球への深い愛を感じていた。群馬・太田市が拠点だったパナソニック(現埼玉)時代。取材日を間違えて誰もいないクラブハウスで立ち尽くしていた社会人1年目の記者を、わざわざ車で迎えにきてくれた。「(取材は)車の中でもいいですか」。奥さんと赤ちゃんを連れての家探しの合間。平謝りに笑顔でうなずき「少しでもラグビーの良さを知ってもらいたいんで」。ハンドルを握りながら、そう言った。日本ラグビーがさらに成熟していく過程に、キャリアをささげた。「(体が)小さいからできない、という人の希望になりたい」。現実は、体格差が残酷なまでに表れるラグビーの世界。日本人で初めてスーパーラグビーに挑戦した最初のシーズンは、試合ごとに遺書になるメッセージを妻に送っていた。 そんな命がけの日々を支えたのも、楕円球への愛情だった。京都の九条ネギ農家で育った幼少期は、親の負担を減らすため、先輩が使い古して穴があいたスパイクを譲り受け、テープで補修してぶかぶかのまま履いて走った。日が沈んでボールが見えなくなると、有料放送を契約している友達の家で世界レベルの試合を目に焼きつけた。「ラグビー小僧」ぶりは、年月がどれだけ経とうとも、変わらなかった。 2019年W杯日本大会に向けた日々は、自身との戦いだった。ベテランの域に入り、体力が落ちないよう自主的に低酸素空間での走力トレーニングなどを追加した。日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチの練習を「地獄」と言っていたが、いつも続けて「ワールドカップで天国(ベスト8)に行くためや」と言っていた。惨敗の悪夢を見た11年W杯ニュージーランド大会を含めて重ねた代表75キャップは、桜のジャージーの激動の軌跡そのものだ。 南アを破る「奇跡」で世界を驚かせた大会を終え、イングランドを去る日。チームの解散式を終えたあとに「ええやろ、気にすんなよ」と、大量のビールが運ばれた宿舎のテラスに招いてくれた。外国出身選手やその家族も参加し、あたたかい木漏れ日の中で、解放された笑顔に包まれたあの空間の心地よさ。そして輪になって飲んだあのビールのすっきりとした苦み−。田中史朗。日本ラグビー発展のために命をかけた男のプレーと気概を忘れない。決して大きくない体に残っている傷とあざの数だけ、またおいしいお酒を飲みましょう。乾杯の音頭は「日本ラグビーのために」で。【14−16年ラグビー担当=岡崎悠利】.

都内で記者会見し「将来的に日本代表のヘッドコーチ(HC)をやってみたい」と宣言した。所属するリーグワン2部東葛で入れ替え戦を含めた4試合を残し、まずは1部昇格へ注力。引退後は東葛のアカデミー指導を軸に、第2の人生に向かう。時に衝突を恐れず、日本ラグビーをけん引した功労者が、新たな夢を追う。「ブライトンの奇跡」が起きたあの日のピッチで、顔をゆがめて見たワンプレーがある。後半21分の失点シーン。185センチ113キロのフッカー・ストラウスに、166センチの男は正面からタックルに入った。理不尽にも見える体格差で吹っ飛ばされ、後方へ1回転。そのままトライまで持っていかれた。「意識が飛びかけていた」。なお立ち上がり、再びタックルにいく。絶対に折れない心。胸が締めつけられた。 ラグビー界を変えたあの日を迎えるずっと前から、楕円(だえん)球への深い愛を感じていた。群馬・太田市が拠点だったパナソニック(現埼玉)時代。取材日を間違えて誰もいないクラブハウスで立ち尽くしていた社会人1年目の記者を、わざわざ車で迎えにきてくれた。「(取材は)車の中でもいいですか」。奥さんと赤ちゃんを連れての家探しの合間。平謝りに笑顔でうなずき「少しでもラグビーの良さを知ってもらいたいんで」。ハンドルを握りながら、そう言った。日本ラグビーがさらに成熟していく過程に、キャリアをささげた。「(体が)小さいからできない、という人の希望になりたい」。現実は、体格差が残酷なまでに表れるラグビーの世界。日本人で初めてスーパーラグビーに挑戦した最初のシーズンは、試合ごとに遺書になるメッセージを妻に送っていた。 そんな命がけの日々を支えたのも、楕円球への愛情だった。京都の九条ネギ農家で育った幼少期は、親の負担を減らすため、先輩が使い古して穴があいたスパイクを譲り受け、テープで補修してぶかぶかのまま履いて走った。日が沈んでボールが見えなくなると、有料放送を契約している友達の家で世界レベルの試合を目に焼きつけた。「ラグビー小僧」ぶりは、年月がどれだけ経とうとも、変わらなかった。 2019年W杯日本大会に向けた日々は、自身との戦いだった。ベテランの域に入り、体力が落ちないよう自主的に低酸素空間での走力トレーニングなどを追加した。日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチの練習を「地獄」と言っていたが、いつも続けて「ワールドカップで天国(ベスト8)に行くためや」と言っていた。惨敗の悪夢を見た11年W杯ニュージーランド大会を含めて重ねた代表75キャップは、桜のジャージーの激動の軌跡そのものだ。 南アを破る「奇跡」で世界を驚かせた大会を終え、イングランドを去る日。チームの解散式を終えたあとに「ええやろ、気にすんなよ」と、大量のビールが運ばれた宿舎のテラスに招いてくれた。外国出身選手やその家族も参加し、あたたかい木漏れ日の中で、解放された笑顔に包まれたあの空間の心地よさ。そして輪になって飲んだあのビールのすっきりとした苦み−。田中史朗。日本ラグビー発展のために命をかけた男のプレーと気概を忘れない。決して大きくない体に残っている傷とあざの数だけ、またおいしいお酒を飲みましょう。乾杯の音頭は「日本ラグビーのために」で。【14−16年ラグビー担当=岡崎悠利】

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