2024年8月21日(水)から23日(金)にかけて開催された“CEDEC2024”。23日に開催されたセッション“『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』におけるフィールド制作とQA ~トーレルーフの裏側で~”の模様をリポート。
たとえば、溶岩までの距離の利用事例。プレイヤーの周囲の座標には野生生物が湧き出すようになっているが、事前に溶岩までの距離を参照して、溶岩に近すぎないことをチェック。プレイヤーが溶岩に接近しても、溶岩のすぐ近くに野生生物が出現するのを抑制できる。
そこで、二次元のテーブルデータの利用を廃止し、地形の表面を粗くボクセル化して、そのボクセルにデータを格納できるようにすれば解決できるのではと考えた。足もとにあるボクセルを参照すればどこでも地形情報を取得でき、挙動の実装が可能になるからだ。 これには膨大な計算量が必要になる。ジオメトリ処理(三次元的に配置された座標を二次元平面上の座標に変換する処理)に強いTCCツール“Houdini”を使えば高速に計算できるのではと考え、具体的な実装に取り組むことにした。 洞窟だからといって特別なデータを参照せず、実装の違いによる挙動の不整合の心配も不要。バグも起こりにくくなり、仕様の制限もなくなった。このボクセル情報は、さまざまな場面で利用されるようなり、挙動の不整合の発生を防ぐことができたという。その利用事例も紹介された。QAエンジニアはバグがないゲームを目指していると思われるかもしれない。しかし、バグがないゲームを最終ゴールにしてしまうと、バグがなくなることがすべてと考えてしまいそうで、開発中に「この要素は絶対バグで苦労するから削ってほしい、といったよくない感情が生まれてしまいそう」だと大礒氏は語る。続けて、バグがたくさん生まれそうな要素にブレーキをかけていくと、「バグがないけど、おもしろい要素も削られてしまったゲームになる恐れがある」と強調。
開発に関わるメンバーが多いと、「このオブジェクトは誰が置いたのだろう? 相談したいことがあるんだけど……」と思っても、相談先を調べるのもひと苦労。デバッグ機能で配置情報を確認できれば、担当者がすぐにわかるほか、今作で追加されたものなのか前作から存在していたものなのか判別もする。 チャットツールは、開発者同士と同じチャットにテスターを招待。タスク管理ツールも公開し、開発チームとして何ができていて、いま何の作業中で、今後どういうものを作ろうとしているのかもすべて共有された。さらに開発者同士のミーティングにも参加してもらうことに。ツールの格差をなくす取り組みも進め、バグを減らして、さらにおもしろさの磨き込みにもつながったそうだ。続いて、竹原氏が登壇。前作ではストラクチャーデザインリードとしてゲーム内の建物全般の監修や制作を行い、今作では地形のアート全体を監修する地形リードを担当。竹原氏からは、規模の大きなまずは、製品のクオリティと効率化について。データを作る作業自体を効率化しつつ、ゲームの遊びに基づいたアート表現を想像して、それらがゲーム内で最終的にどう見えているのかをアーティスト自身が体験、確認することは、アーティストの責任としてなくしてはいけない大切な作業だと竹原氏は語る。
洞窟システムを導入した新しいワークフローでは、遊びの検討・実装と、絵の検討・実装時に、洞窟システムで試作した絵をもとに自動でディテールを付けるため、HoudiniでHADを作成。このふたつの作業を同時に進行し、それらをもとにプロシージャルのモデリングでディテールを付けて製品とする。 ハイラル全土には、お願いを聞いてあげると旅に役立つアイテムをくれるコログが1000体ほど存在。仕様や地形が変わるたびにコログのデバッグするのは厳しいので、洞窟システムを構築したときの自動化を思いつくが、それでも人による目視での確認は重要だ。 ここで、それらを補助するツール“全数チェックツール”が誕生。PC内のツールとゲーム画面が連動し、ビルドでエリアを見ながら確認ができたので、ふだんからビルドを使って確認を行っているアーティストにとっても扱いやすいツールに。目視での確認という作業は残るが、このツールにより、二度手間になってしまうかもしれなかった確認作業が計画的かつ正確にチェックを行えるようになった。
ここで再び登場するのがデバッグ機能だ。ふだんの制作では、デバッグ機能を使って自由に移動できていたため、洞窟の帰り道もデバッグ機能を使って自由に移動し、かんたんに脱出することができたらと考えた。そして、ゲーム内の遊びとして実装することに。
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