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「会議はまず笑わせろ」――28万人企業・日立副社長が明かす「逃げない」リーダー論

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「会議はまず笑わせろ」――28万人企業・日立副社長が明かす「逃げない」リーダー論
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かつての失敗で落ち込んだ時、「命までは取られない」という先輩の言葉に救われた日立製作所の阿部淳副社。知られざる過去の経験から、副社長として背負うプレッシャーの正体まで。技術の日立を支える人間・阿部淳のリーダー論に迫る。

かつての失敗で落ち込んだ時、「命までは取られない」という先輩の言葉に救われた阿部氏は、「日立には人を育てる文化がある」と語る。知られざる過去の経験から、副社長として背負うプレッシャーの正体まで。技術の日立を支える人間・阿部淳のリーダー論に迫る。 阿部淳(あべ・じゅん)1984年、日立製作所入社。 ITソフトウェア開発に従事したのち、データストレージやクラウドなどのサービスプラットフォーム部門で事業責任者を歴任。大みか事業所長を経て、2018年4月に産業・流通ビジネスユニットCEOを務めた。2024年4月に代表執行役 執行役副社長。2025年4月よりデジタルシステム&サービス(DSS)の事業責任者。1961年生まれ。宮城県出身(以下撮影:河嶌太郎)中学生のときはバスケットボール部だったのですが、補欠で、しかも体も小さくて全然ダメだったんです。その後、高校と大学ではボート部に入りました。球技は自分には向いていないと思ってボートを選んだのですが、キャプテンや主将、副主将のようなポジションを務めたことはなく、ひたすらオールを漕いでいる側でした。なので、自分がいまリーダー的な立場にいるのは、正直なところ自分でも不思議な感覚があります。もともとリーダーになるタイプだと全く思っていませんでしたから。 日立に入ってから、ソフトウェア開発の現場で学んだことは大きかったですね。主任のころ、データベース系のミドルウェアを担当する部署にいたのですが、当時の課長がプロジェクト会議でよく怒る人だったんです。そうすると、誰も本当のことを言わなくなる。問題があっても言い出しにくくなり、その結果として後になって大きなトラブルになる。そういう場面を何度か見ました。 その課長の後任として自分がチームを任されたとき、最初に心に決めたのは「まず笑いを取ろう」ということでした。くだらないことでもいいから一つ笑いを起こしてから、「じゃあ会議を始めましょうか」と。そうすると、メンバーが「実はここが困っている」「このままだと厳しい」と本音を話してくれるようになるんですね。 そこから先は、言ってもらったことに対して、できるだけこちらが動く。「じゃあスケジュールを延ばそうか」「人を追加しようか」「予算をどうにかしようか」「それは自分が調整するよ」というように対応していく。そうすると、メンバーの側も「この上司はちゃんと動いてくれる」「頼れる上司だ」と思ってくれるようになります。まず言いやすい環境をつくり、言ってもらったことにはできる限り応える。今やっていることも、基本的には当時と変わっていないんです。 あとは、少し自虐ネタを交えるようにしています。いくつか“持ちネタ”があって、場を和ませるときに使います。失敗談も含めて自分をさらけ出すと、周りも「この人には本音を言っていいんだな」と感じてくれます。そうした雰囲気づくりができて初めて、本当の意味でチームをまとめられると考えています。失敗から立ち直る時に大きかったのは「いい先輩に恵まれたこと」だと思っています。製品の障害で顧客に迷惑をかけて、徹夜で原因を調べるようなことが昔は本当によくありました。システムが止まってしまって、顧客は大変な状況に置かれています。原因もすぐには分からない。 そうすると、自分自身もどんどん追い詰められていきますよね。そのとき、先輩が「阿部ちゃん、命までは取られないから」と声をかけてくれたんです。その一言で、ふっと肩の力が抜けるというか、少し気が楽になりました。そういう言葉をくれる人の存在は、大きいと感じます。プレッシャーはもちろんあります。ただ、周りにいる人たちが本当に優秀なのです。人として尊敬できるし、エンジニアとしてもビジネスパーソンとしても信頼できる人たちが多い。今回のような取材の機会でも、事前の準備をしっかり進めてくれるメンバーがいて、チームとして受け止めてくれます。そういう意味では、一人で背負っている感覚はあまりなくて、チームで一緒にやっているという意識が強いですね。企業システムが大型コンピューター中心だった時代からずっとITに関わってきて、そこからAIの時代になり、スマートフォンやクラウドが当たり前になりました。日立のIT部門が大きく変わっていく姿を見られていることに、いまだにワクワクしています。その上で、この立場で意思決定に関われているのは、全く予想もしていなかったことです。上昇志向が強かったタイプでもなく、目の前の仕事を一生懸命やってきただけという感覚に近いですね。 日立は、挑戦している人をちゃんと見てくれる会社だと感じています。外からは“堅実・安定”というイメージが強いかもしれませんが、挑戦して、そこで学んでいくことを評価してくれる文化があります。同じ失敗を何度も繰り返すのはさすがにいけませんが、挑戦から学んで次に生かす姿勢を大事にしていると思います。 マネジメントもテクノロジーも、結局は経験ですし、人を相手にする仕事です。アサインメントやエンカレッジをどうするか。チームでどう成果を出すか。パートナーとどう信頼関係を築くか。そこでは、たまにくだらないことも言いながら、人として信頼してもらえるかどうかが大事です。 振り返ってみると、日立はそういう自分のスタイルを認めてくれて、育ててくれた会社だと感じています。「人を育てる文化」があるのだと思っています。最後に大事なのは、逃げないことだと思うのです。どんなことがあっても、顧客から逃げたら信用を失ってしまう。インフラやミッションクリティカルな領域を担っている企業として、そこは絶対に外せません。そこを守りながら、その上にAIのような新しい技術を積み上げていく。それが、日立のカルチャーのベースになっていると考えています。大学では専攻も卒論も財務会計だったのですが、指導教官から「卒論にソフトウェアを付けなさい」と言われ、BASICで伝票仕訳をしてB/S(貸借対照表:Balance Sheet)やP/L(損益計算書:Profit and Loss Statement)を出力するプログラムを作ったことがありました。その卒論を見た日立の人事から「君をソフトウェア開発で採用したい」と言われて、冗談だと思っていたら、向こうは本気だったというわけです。本当は経理部を希望していたのに、配属されたのはソフトウェア事業部のミドルソフト設計でした。入社してまず感じたのは、日立のエンジニアは本当に優秀だということでした。日立製作所の社員だけでなく、グループ会社の方々も含めて、皆さんすごく勉強して、日立に入社してきた人たちです。ただ、当時のIT業界はどこもそうだったと思いますが、徹夜続きになることも珍しくありませんでした。私は、こんな日本の優秀な人たちを、この働き方のまま放置していいのだろうかと強く感じていました。プログラミングはやむを得ず始めた面もありましたが、テクノロジーはもともと好きでしたし、自分にもできると感じられたので、資格試験も一通り受けて合格していきました。財務会計を勉強していたこともあり、経営や営業に近い仕事をしたい思いも強かったです。その結果として、いろいろな部署や事業を経験してきました。今やっていることを一言でいえば営業活動と数字の計算ですから、ある意味では当初の希望はかなっているとも言えます。 また、テクノロジーに興味を持ち続けてきたことで、ゼネラリスト的な育て方もしてもらいました。一方で、事業の本質、例えば逃げないことや、顧客との向き合い方といった部分も含めて、実践の中で学ばせてもらいました。これまでいろいろな方から受け取ってきたものを、できるだけ後輩たちに返していきたいと思っています。【イベント情報】学研が挑む"真のDX" 学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。.

かつての失敗で落ち込んだ時、「命までは取られない」という先輩の言葉に救われた阿部氏は、「日立には人を育てる文化がある」と語る。知られざる過去の経験から、副社長として背負うプレッシャーの正体まで。技術の日立を支える人間・阿部淳のリーダー論に迫る。 阿部淳(あべ・じゅん)1984年、日立製作所入社。 ITソフトウェア開発に従事したのち、データストレージやクラウドなどのサービスプラットフォーム部門で事業責任者を歴任。大みか事業所長を経て、2018年4月に産業・流通ビジネスユニットCEOを務めた。2024年4月に代表執行役 執行役副社長。2025年4月よりデジタルシステム&サービス(DSS)の事業責任者。1961年生まれ。宮城県出身(以下撮影:河嶌太郎)中学生のときはバスケットボール部だったのですが、補欠で、しかも体も小さくて全然ダメだったんです。その後、高校と大学ではボート部に入りました。球技は自分には向いていないと思ってボートを選んだのですが、キャプテンや主将、副主将のようなポジションを務めたことはなく、ひたすらオールを漕いでいる側でした。なので、自分がいまリーダー的な立場にいるのは、正直なところ自分でも不思議な感覚があります。もともとリーダーになるタイプだと全く思っていませんでしたから。 日立に入ってから、ソフトウェア開発の現場で学んだことは大きかったですね。主任のころ、データベース系のミドルウェアを担当する部署にいたのですが、当時の課長がプロジェクト会議でよく怒る人だったんです。そうすると、誰も本当のことを言わなくなる。問題があっても言い出しにくくなり、その結果として後になって大きなトラブルになる。そういう場面を何度か見ました。 その課長の後任として自分がチームを任されたとき、最初に心に決めたのは「まず笑いを取ろう」ということでした。くだらないことでもいいから一つ笑いを起こしてから、「じゃあ会議を始めましょうか」と。そうすると、メンバーが「実はここが困っている」「このままだと厳しい」と本音を話してくれるようになるんですね。 そこから先は、言ってもらったことに対して、できるだけこちらが動く。「じゃあスケジュールを延ばそうか」「人を追加しようか」「予算をどうにかしようか」「それは自分が調整するよ」というように対応していく。そうすると、メンバーの側も「この上司はちゃんと動いてくれる」「頼れる上司だ」と思ってくれるようになります。まず言いやすい環境をつくり、言ってもらったことにはできる限り応える。今やっていることも、基本的には当時と変わっていないんです。 あとは、少し自虐ネタを交えるようにしています。いくつか“持ちネタ”があって、場を和ませるときに使います。失敗談も含めて自分をさらけ出すと、周りも「この人には本音を言っていいんだな」と感じてくれます。そうした雰囲気づくりができて初めて、本当の意味でチームをまとめられると考えています。失敗から立ち直る時に大きかったのは「いい先輩に恵まれたこと」だと思っています。製品の障害で顧客に迷惑をかけて、徹夜で原因を調べるようなことが昔は本当によくありました。システムが止まってしまって、顧客は大変な状況に置かれています。原因もすぐには分からない。 そうすると、自分自身もどんどん追い詰められていきますよね。そのとき、先輩が「阿部ちゃん、命までは取られないから」と声をかけてくれたんです。その一言で、ふっと肩の力が抜けるというか、少し気が楽になりました。そういう言葉をくれる人の存在は、大きいと感じます。プレッシャーはもちろんあります。ただ、周りにいる人たちが本当に優秀なのです。人として尊敬できるし、エンジニアとしてもビジネスパーソンとしても信頼できる人たちが多い。今回のような取材の機会でも、事前の準備をしっかり進めてくれるメンバーがいて、チームとして受け止めてくれます。そういう意味では、一人で背負っている感覚はあまりなくて、チームで一緒にやっているという意識が強いですね。企業システムが大型コンピューター中心だった時代からずっとITに関わってきて、そこからAIの時代になり、スマートフォンやクラウドが当たり前になりました。日立のIT部門が大きく変わっていく姿を見られていることに、いまだにワクワクしています。その上で、この立場で意思決定に関われているのは、全く予想もしていなかったことです。上昇志向が強かったタイプでもなく、目の前の仕事を一生懸命やってきただけという感覚に近いですね。 日立は、挑戦している人をちゃんと見てくれる会社だと感じています。外からは“堅実・安定”というイメージが強いかもしれませんが、挑戦して、そこで学んでいくことを評価してくれる文化があります。同じ失敗を何度も繰り返すのはさすがにいけませんが、挑戦から学んで次に生かす姿勢を大事にしていると思います。 マネジメントもテクノロジーも、結局は経験ですし、人を相手にする仕事です。アサインメントやエンカレッジをどうするか。チームでどう成果を出すか。パートナーとどう信頼関係を築くか。そこでは、たまにくだらないことも言いながら、人として信頼してもらえるかどうかが大事です。 振り返ってみると、日立はそういう自分のスタイルを認めてくれて、育ててくれた会社だと感じています。「人を育てる文化」があるのだと思っています。最後に大事なのは、逃げないことだと思うのです。どんなことがあっても、顧客から逃げたら信用を失ってしまう。インフラやミッションクリティカルな領域を担っている企業として、そこは絶対に外せません。そこを守りながら、その上にAIのような新しい技術を積み上げていく。それが、日立のカルチャーのベースになっていると考えています。大学では専攻も卒論も財務会計だったのですが、指導教官から「卒論にソフトウェアを付けなさい」と言われ、BASICで伝票仕訳をしてB/S(貸借対照表:Balance Sheet)やP/L(損益計算書:Profit and Loss Statement)を出力するプログラムを作ったことがありました。その卒論を見た日立の人事から「君をソフトウェア開発で採用したい」と言われて、冗談だと思っていたら、向こうは本気だったというわけです。本当は経理部を希望していたのに、配属されたのはソフトウェア事業部のミドルソフト設計でした。入社してまず感じたのは、日立のエンジニアは本当に優秀だということでした。日立製作所の社員だけでなく、グループ会社の方々も含めて、皆さんすごく勉強して、日立に入社してきた人たちです。ただ、当時のIT業界はどこもそうだったと思いますが、徹夜続きになることも珍しくありませんでした。私は、こんな日本の優秀な人たちを、この働き方のまま放置していいのだろうかと強く感じていました。プログラミングはやむを得ず始めた面もありましたが、テクノロジーはもともと好きでしたし、自分にもできると感じられたので、資格試験も一通り受けて合格していきました。財務会計を勉強していたこともあり、経営や営業に近い仕事をしたい思いも強かったです。その結果として、いろいろな部署や事業を経験してきました。今やっていることを一言でいえば営業活動と数字の計算ですから、ある意味では当初の希望はかなっているとも言えます。 また、テクノロジーに興味を持ち続けてきたことで、ゼネラリスト的な育て方もしてもらいました。一方で、事業の本質、例えば逃げないことや、顧客との向き合い方といった部分も含めて、実践の中で学ばせてもらいました。これまでいろいろな方から受け取ってきたものを、できるだけ後輩たちに返していきたいと思っています。【イベント情報】学研が挑む"真のDX" 学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。

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