テラスハウスに出演した長谷川ミラさんは2017年、自身の服飾ブランドを立ち上げました。しかし、ある一本の映画に出会ったことでアパレル業界の闇を知り、順調だったブランドの販売を突如中止。持続可能なファッションブランドに再構築する彼女の挑戦を追いました。⇒
アパレル産業の搾取構造や環境汚染についての問題は、「ファッション史上最悪の事故」と呼ばれるラナ・プラザ崩落事故によって、世界で知られることとなった。2013年4月24日、バングラデシュで複数の縫製工場が入った8階建ての複合ビル「ラナ・プラザ」が崩落し、1100人以上が死亡、数千人が負傷したと言われている。ヒューマーンライツウオッチのリポートによると、労働者の多くは若い女性たちで、工場内で肉体的・精神的虐待や時間外労働が横行し、有給や出産休暇取得の拒否、予定された賃金・ボーナスの不払い、飲料水の不支給、などの劣悪な労働条件に日々直面しながら、洋服の製造を続けていたという。 トレンドを取り入れ、低価格に抑えた衣料品を短期間で生産・販売する「ファストファッション」は、2000年代頃から暮らしに浸透してきた。低価格を実現するために、ファッションブランドは開発途上国に生産拠点に置き、安価な賃金と過酷な労働環境を人々に強いることで、消費者の欲求を満たしていたと言われる。「テラスハウス ALOHA STATE」に出演した事で世間に大きく知られることとなった長谷川ミラは、テラスハウス卒業後の2017年、自身のブランド「JAMESIE」を立ち上げた。テラスハウス出演の知名度を生かし、ブランドは着実に成長。19歳という若さで大金を手にした一方で、彼女のブランドは安価な服を材料として仕入れ、いわゆる安価な労働力や環境破壊などの犠牲の上に生まれた生地に自らデザインをし、販売するという形態だった。 順調に見えた彼女の生活を変えたのは、2018年に入学(のちに中退)したイギリスにあるセントラル・セント・マーチンズ大学での学びに加えて、1本の映画との出会いだった。アパレル産業の裏側を描いたドキュメンタリー映画「The True Cost」を観たことで、人生が一変したという。自身の経済活動を通し、他人を犠牲にしていることに違和感を覚えた。「母親になった時に、子供にこういった問題を残したくない」。 彼女は抱えていた在庫の販売を休止し、サステナブルな洋服の製造販売へと舵を切った。元来、ファッション業界は流行の移り変わりが激しく、加えてファストファッションが世界的に広まった結果、ここ数十年の衣料品生産は社会環境・地球環境の観点から持続不可能な成長を続けている。これらのファストファッションの成長はポリエステルを繊維として使用する事が増加したことによって促進された側面がある。Global Fashion Agenda and The Boston Consulting Group によると、ポリエステルは世界の衣料品の約60%を構成しているといわれている。こうしたポリエステル繊維の市場シェア拡大は、その後に残る生物分解されない廃棄物の側面から大きな問題となっている。 今回動画で追ったのは、拡大するポリエステル繊維をどう再利用するかに取り組む日本環境設計と、自身のブランドを販売中止していた長谷川ミラがタッグを組んで立ち上げた社会に優しいサスティナブルな服を作るという挑戦だ。日本環境設計は、「大量に捨てられている服を循環させたい」。そんな純粋な思いから2007年に設立された。小売店で古着を回収し、独自技術を使ってポリエステル繊維を再生ポリエステル原料に変えて、新たな服をつくる。これまでTシャツ約1,500万枚分にあたる3,000トンの古着を回収してきたという。 しかし、再生コストによって原材料が高くなり、消費者が商品に対して支払う販売価格が高価になりがちなサスティナブルファッションへのニーズは依然として低く、長谷川ミラが個人で収入を安定させることは難しい。それでもなお彼女が戦い続ける姿を、ぜひ映像で観てほしい。映像内で長谷川ミラが訪れた黒瀬株式会社は、国内の古着を回収し国内外に販売、またはそれらを機械の油ふきなどに使う雑巾・ウエスとしてリユースしているリサイクル/リユースの会社だ。「例年なら月に60トンだが、2週間で120トン集まった」と、社長の黒瀬博彦さん。コロナ禍の巣ごもりの影響で、断捨離をする人が急増し、衣服の回収が多くなる一方で、中古衣料のニーズがある開発途上国への輸出は、感染防止のため一時ストップし、工場内に中古衣料が溢れたという。 また黒瀬さんは、リサイクル不能品も近年増えていると話す。ポリウレタンやポリエステルなど化学繊維を配合し、保温機能を高めた肌着が多く流通し始めたが、こうしたいくつもの化学繊維を配合した素材はリサイクルに向いていないという。リサイクル技術は存在するものの、多くの中小業者にとっては高価な設備が必要なため、ハードルが高い。 黒瀬株式会社も古着とウエスへのリサイクルが事業の軸となっているが、油などを拭き取るために使われるウエスに化学繊維の素材は向いておらず、また保温機能を高めた肌着などは輸出主要国である東南アジアやアフリカなどの暑い国では重宝されず、結局廃棄しなければいけないことが多いという。日本から輸出される中古衣料品は、開発途上国の産業を破壊していると指摘する声もあるため、リサイクルされれば全てが解決される問題とも言い切れない。 私たちすべての人が必ず身に着ける「服」を通じて、こうした問題は起きている。また大量消費や搾取という問題は、日本にいる我々も被害を受けているのではないだろか。あるいはお互いにお互いのことを、そのような関係性の中で捉えてしまっていることはないだろうか。【DOCS for SDGs】他作品は下記URLより、ご覧いただけます。.
アパレル産業の搾取構造や環境汚染についての問題は、「ファッション史上最悪の事故」と呼ばれるラナ・プラザ崩落事故によって、世界で知られることとなった。2013年4月24日、バングラデシュで複数の縫製工場が入った8階建ての複合ビル「ラナ・プラザ」が崩落し、1100人以上が死亡、数千人が負傷したと言われている。ヒューマーンライツウオッチのリポートによると、労働者の多くは若い女性たちで、工場内で肉体的・精神的虐待や時間外労働が横行し、有給や出産休暇取得の拒否、予定された賃金・ボーナスの不払い、飲料水の不支給、などの劣悪な労働条件に日々直面しながら、洋服の製造を続けていたという。 トレンドを取り入れ、低価格に抑えた衣料品を短期間で生産・販売する「ファストファッション」は、2000年代頃から暮らしに浸透してきた。低価格を実現するために、ファッションブランドは開発途上国に生産拠点に置き、安価な賃金と過酷な労働環境を人々に強いることで、消費者の欲求を満たしていたと言われる。「テラスハウス ALOHA STATE」に出演した事で世間に大きく知られることとなった長谷川ミラは、テラスハウス卒業後の2017年、自身のブランド「JAMESIE」を立ち上げた。テラスハウス出演の知名度を生かし、ブランドは着実に成長。19歳という若さで大金を手にした一方で、彼女のブランドは安価な服を材料として仕入れ、いわゆる安価な労働力や環境破壊などの犠牲の上に生まれた生地に自らデザインをし、販売するという形態だった。 順調に見えた彼女の生活を変えたのは、2018年に入学(のちに中退)したイギリスにあるセントラル・セント・マーチンズ大学での学びに加えて、1本の映画との出会いだった。アパレル産業の裏側を描いたドキュメンタリー映画「The True Cost」を観たことで、人生が一変したという。自身の経済活動を通し、他人を犠牲にしていることに違和感を覚えた。「母親になった時に、子供にこういった問題を残したくない」。 彼女は抱えていた在庫の販売を休止し、サステナブルな洋服の製造販売へと舵を切った。元来、ファッション業界は流行の移り変わりが激しく、加えてファストファッションが世界的に広まった結果、ここ数十年の衣料品生産は社会環境・地球環境の観点から持続不可能な成長を続けている。これらのファストファッションの成長はポリエステルを繊維として使用する事が増加したことによって促進された側面がある。Global Fashion Agenda and The Boston Consulting Group によると、ポリエステルは世界の衣料品の約60%を構成しているといわれている。こうしたポリエステル繊維の市場シェア拡大は、その後に残る生物分解されない廃棄物の側面から大きな問題となっている。 今回動画で追ったのは、拡大するポリエステル繊維をどう再利用するかに取り組む日本環境設計と、自身のブランドを販売中止していた長谷川ミラがタッグを組んで立ち上げた社会に優しいサスティナブルな服を作るという挑戦だ。日本環境設計は、「大量に捨てられている服を循環させたい」。そんな純粋な思いから2007年に設立された。小売店で古着を回収し、独自技術を使ってポリエステル繊維を再生ポリエステル原料に変えて、新たな服をつくる。これまでTシャツ約1,500万枚分にあたる3,000トンの古着を回収してきたという。 しかし、再生コストによって原材料が高くなり、消費者が商品に対して支払う販売価格が高価になりがちなサスティナブルファッションへのニーズは依然として低く、長谷川ミラが個人で収入を安定させることは難しい。それでもなお彼女が戦い続ける姿を、ぜひ映像で観てほしい。映像内で長谷川ミラが訪れた黒瀬株式会社は、国内の古着を回収し国内外に販売、またはそれらを機械の油ふきなどに使う雑巾・ウエスとしてリユースしているリサイクル/リユースの会社だ。「例年なら月に60トンだが、2週間で120トン集まった」と、社長の黒瀬博彦さん。コロナ禍の巣ごもりの影響で、断捨離をする人が急増し、衣服の回収が多くなる一方で、中古衣料のニーズがある開発途上国への輸出は、感染防止のため一時ストップし、工場内に中古衣料が溢れたという。 また黒瀬さんは、リサイクル不能品も近年増えていると話す。ポリウレタンやポリエステルなど化学繊維を配合し、保温機能を高めた肌着が多く流通し始めたが、こうしたいくつもの化学繊維を配合した素材はリサイクルに向いていないという。リサイクル技術は存在するものの、多くの中小業者にとっては高価な設備が必要なため、ハードルが高い。 黒瀬株式会社も古着とウエスへのリサイクルが事業の軸となっているが、油などを拭き取るために使われるウエスに化学繊維の素材は向いておらず、また保温機能を高めた肌着などは輸出主要国である東南アジアやアフリカなどの暑い国では重宝されず、結局廃棄しなければいけないことが多いという。日本から輸出される中古衣料品は、開発途上国の産業を破壊していると指摘する声もあるため、リサイクルされれば全てが解決される問題とも言い切れない。 私たちすべての人が必ず身に着ける「服」を通じて、こうした問題は起きている。また大量消費や搾取という問題は、日本にいる我々も被害を受けているのではないだろか。あるいはお互いにお互いのことを、そのような関係性の中で捉えてしまっていることはないだろうか。【DOCS for SDGs】他作品は下記URLより、ご覧いただけます。
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