ミャンマー国軍が一般国民を対象に徴兵制を導入した。民主派や少数民族の反軍勢力との武力衝突で劣勢に陥っており、兵員を補充して体制を立て直す狙いだ。3年前のクーデター以降、強権支配に耐え、生活を営んできた市民の間には動揺が広がる。自国民同士を戦わせる非道な政策を、国軍は実行に移すべきではない。2月10日に突如として「国民兵役法」を施行した。旧軍事政権の末期の2010年に制定したものの発効は見送っ
2月10日に突如として「国民兵役法」を施行した。旧軍事政権の末期の2010年に制定したものの発効は見送っていた法律だ。引き金は国軍支配の綻びだ。昨年10月以降、反軍勢力の攻勢で地方拠点を次々と奪われている。多数の兵士が死傷し、士気の低下で投降や逃亡も相次ぐ。通常兵力は35万人規模とされるが、実際はその半分〜3分の1へ目減りしたとの見方がある。徴兵は不足を補う弥縫(びほう)策でしかない。
一般市民を前線に送り込み、過酷な荷役や「人間の盾」に使うつもりでは、との恐怖が広がる。徴兵を避けようと国外脱出を図る若者が増え、申請者が殺到した旅券発給所で死者が出る事故も起きた。国軍幹部への賄賂の横行も懸念される。武力闘争に距離を置いてきた若者の間でも、徴兵に応じるくらいなら国軍と戦おうと考える人もいるという。 北朝鮮と「休戦」の状態の韓国や戦時下のウクライナなど、徴兵制を採用する国は国防上の理由が大半だ。内戦のための徴兵は異常と言うほかない。国軍がすべきは兵力増強ではなく、暴力の即時停止と反軍勢力との対話である。 日本を含む国際社会は足並みをそろえて愚行を非難する必要がある。特に東南アジア諸国連合(ASEAN)は戦闘で居住地を追われた避難民への人道支援について国軍と協議を始めている。人道危機に拍車をかける徴兵の撤回を強く働きかけてほしい。
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