小林製薬の紅麹(べにこうじ)サプリメントが原因と疑われる健康被害は、大きく広がっています。厚生労働省によれば、医療機関を受診した人1434人、入院した人240人、死者数5人(4月18日現在)。健康食品としては未曽有の事件です。日本腎臓学会の調査では、倦怠(けんたい)感や尿の異常、腎機能障害などを訴える人が目立っており、亡くなった方のうち3人にはがんや高脂血症などの持病があった、とのことです。
原因物質はまだ特定されていません。製品中に、意図しない成分としてプベルル酸という物質があったことは確認されています。しかし、プベルル酸は急性の腎臓障害を招くほどの強い毒性はない、とみる科学者が多いのです。そのため、原料や製造段階でのほかのかびやかびの作る毒性物質の混入、紅麹菌が目的外の成分を多く作り出していたおそれ、また、それらの物質同士の相乗影響の可能性などが指摘されています。厚生労働省と国立医薬品食品衛生研究所が調査解析を急いでいます。問題となった紅麹サプリメントは、悪玉(LDL)コレステロールの低下効果をうたう機能性表示食品でした。機能性表示食品は、特定保健用食品(トクホ)と似ていますが、実際にはまったく異なります。
トクホは、事業者が安全性や有効性などのデータを国に提出して表示を申請し、国が審査を行って「許可」するもの。一方、機能性表示食品は国の審査がなく、国の作ったガイドラインに沿って企業が書類を作成し「届け出」すれば、機能性を表示できます。 トクホは開発に長い時間と億単位の費用がかかります。そのため2013年、当時の安倍晋三首相が「中小企業・小規模事業者には、チャンスが事実上閉ざされている」とし、情報開示を核とした機能性表示の解禁を宣言。2015年に制度が創設されました。事業者が自らの責任で製品の安全性や機能性を確保し、届け出情報が消費者庁のウェブサイトで公開されています。消費者自身がその書類を読み、科学的根拠などを確認して購入摂取する、という仕組みなのです。皆さんは、こうしたことをご存じだったでしょうか? 市民団体などは当初から疑問を提示していました。企業に甘すぎるのではないか? 科学的根拠の薄いものが出回るのではないか? 消費者は、公開されている届け出書類をチェックして判断できるのか?
特に、「食の安全」の専門家は、植物や食品等から成分を抽出濃縮し錠剤やカプセル型にした「サプリメント」が機能性表示食品として大量に出回ることを懸念していました。こうしたものがリスクが高い、というのは、食の安全に関わる科学者の常識です。一般的な食品は抽出や濃縮がなされていない上、食べる量に限界があります。しかも、毎日食べる食品はほとんどありません。主食のはずの米ですら、毎日は食べないという人が増えています。一般的な食品は、かび毒や植物毒、重金属などをわずかに含みリスクゼロではありませんが、それらを大量に食べるわけではないので健康影響は出ないのです。 ところが、サプリメントはぎゅっと濃縮され摂取しやすくなっています。しかも、効果を求めて毎日摂取するので、さまざまな成分の過剰摂取に陥りやすいのです。不純物に毒性がある場合は、健康被害が容易に起きます。しかも、法的には食品と位置付けられるので、医薬品のような厳しい監視システムがありません。内閣府食品安全委員会は機能性表示食品制度が始まった2015年、機能性表示食品やトクホも含め、消費者が健康効果を期待して摂るいわゆる「健康食品」の安全性について、報告書をまとめていました。通常の食品と異なる形態に注意が必要であること、「天然」「自然」「ナチュラル」などのうたい文句は、科学的には「安全」を意味するものではないこと、医薬品並みの品質管理はなされていないことなど、消費者向けの「19のメッセージ」で伝えていました。もちろん、安全な食品を提供するのは事業者の責務であり、小林製薬の責任は問われなければなりません。しかし、多くの消費者は、医薬品ではなく食品であることによいイメージを持ち、国の制度である機能性表示食品だからこそ信頼していました。届け出情報のチェックなど、ほとんどの人がしていなかったでしょう
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