米国が、AIチップへのアクセスを制限する新たな規制を強化しました。この規制は、米国とその同盟国（ドイツ、オランダ、日本、韓国、台湾など）を対象とした第1カテゴリーと、世界の大多数の国を対象とした第3カテゴリー、さらに一部の安全基準を満たす国を対象とした第2カテゴリーに分けられます。企業は、それぞれのカテゴリーに応じて、AIチップへのアクセス量や使用範囲が制限されます。 産業界からは、この規制が、技術革新や経済成長を阻害する可能性があると懸念されています。特に、規制強化による代替技術への移行促進は、米国の国際競争力に悪影響を与える可能性が指摘されています。
米国と18カ国（ドイツ、オランダ、日本、韓国、台湾など）は、ほぼ制限なく AIチップ にアクセスできるカテゴリーに分類されます。このカテゴリーに本社を置く企業は、総計算能力の25%を他の地域に配置できます。ただし、米国企業については、50%を米国国内に保持することが義務付けられます。世界の大多数の国はこの第3カテゴリーに該当し、2025年から2027年の期間で、約50,000個のGPUに相当する計算能力が上限として設定されます。企業単位では、米国の安全保障基準と人権基準を満たし、VEU（Validated End User）認証を取得することで、より高い上限の申請が可能となります。 さらに、規制はAIモデルの開発・運用にも及んでいます。第3カテゴリーの国でのAIモデルの重み（model weights）のホスティングは禁止され、第2カテゴリーの国でも一定の安全基準を満たす必要があります。ただし、オープンソースモデルは規制対象外となります。
この規制強化に対し、NVIDIAは強く反発しています。同社のネッド・フィンクル副社長は声明で、この規制が「反中国的な動き」を装いながら、実際には世界中のコンピューターに影響を与え、代替技術への移行を促すことになると警告しました。さらに、バイデン政権に対し「政権交代直前のこの時期に新たな規制を導入することは、米国経済に損害を与え、米国を後退させ、敵対国の思う壺になる」と強く批判しました。 また、Amazon、Microsoft、Metaなどが参画する情報技術産業協議会（ITI）は、規制案が米企業の海外でのコンピューティングシステム販売能力に恣意的な制約を課し、グローバル市場を競合他社に譲ることになりかねないと指摘しています。 ITIのジェイソン・オックスマンCEOはこの動きを事前に察知し、1月7日付でレイモンド商務長官宛ての書簡を送付。規制案の完全な実施ではなく、地政学的・経済的な影響の大きさを考慮し、パブリックコメントを受け付けるプロセス（proposed rulemaking）としての発行を求めています。1月20日に予定されているトランプ政権への移行を控え、産業界からは政権交代直前のこのような重要な政策変更への批判が強まっています。トランプ前大統領は1度目の政権時代から国家安全保障を理由に対中技術販売規制を実施しており、新政権下でも何らかの形で輸出規制は継続されるとの見方が出ていますが、その具体的な内容については不透明な状況が続いている。バイデン政権が目指す先端技術の拡散制御と、産業界が懸念する経済・技術革新への影響のバランスを、新政権がどのように図るのか注目されます
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