2024年度の都道府県別最低賃金は、東北や九州、四国を中心に国が引き上げ額の「目安」として示した50円を大幅に上回った。背景には、都市部や隣県に働き手を奪われまいとする人材獲得競争の激化がある。ただ、企業にとって急激な賃上げは、人件費の増加や「年収の壁」を意識した就労時間の抑制による「人手不足倒産」も招きかねない。地域経済への弊害も懸念される。
最低賃金引き上げを巡っては、人材流出を防ぎたい地方自治体の首長から、議論する地方審議会への要請が相次いだ。徳島県は現状の最低賃金は経済の実態よりも低いとし、大幅な引き上げを求めていたが、29日に異例の84円増で決着。後藤田正純知事は「他県との競争力や若者の流出を防ぐ観点からも評価できる」とコメントした。ただ、帝国データバンクによると、人件費の高騰や採用難による人手不足倒産は、今年1~6月に182件と、比較可能な13年以降で同時期として過去最高となった。同社徳島支店の八木勇世支店長は「最低賃金が低いままでは企業の成長にもつながらない」と指摘する一方、中小・零細規模の卸・小売業やサービス業などへの「経営への打撃は大きい」とみている。
最低賃金が上がることで、税負担増などを避けるため、一定の年収を超えないよう就労時間を抑制する「年収の壁」の悪影響も懸念される。盛岡市の40代の酒屋店長は、就労抑制があれば「余裕を持って人を雇っていないので(シフトの)やりくりが難しい」と話した。 日本総合研究所の山田久客員研究員は最低賃金について「急激な引き上げで地域産業が壊れることもあり、持続性のある形が望ましい」と指摘。年収の壁以上に働けば「リターンも大きい」とした上で、政府には制度改正の検討も求めた。
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