《機関誌「台湾青年」に感動し、独立運動に興味を抱いたものの、執筆陣の主要メンバー、黄昭堂氏の「国民党の特務では」の疑いは解けないまま。そんなころ、台湾に一時…
昭和37(1962)年夏、療養中の父の調子がよくない、ということで台湾に帰ることにした。まだブラックリストに載っていないころだったから、行き来はできたのよ。そうしたらどこで聞いたのか、黄昭堂から「話がある」と言われ、お茶の水のバーで待ち合わせた。
私はツッパリで「逃げたな」と思われるのも癪(しゃく)だし、台湾独立への夢に突き進んでいる黄昭堂からの頼みを断るなんてできない。でも日本の独立運動家のメッセージを反体制派とされる政治家に届けたことが国民党にバレたら、間違いなく拘束され、二度と台湾から出られなくなるな、とは思った。人間って不思議で、東京では「会って伝言を届けるだけじゃん。証拠も残らないし」と思うようにしていたのが、台湾の土を踏んだとたん、バーッと恐怖が押し寄せてきた。戒厳令下だし、これは想像以上に危険だぞ、と。その土地の空気よね。東京では心のどこかにしまっていた大弾圧「二・二八事件」や白色テロの恐怖の記憶が、その空気でよみがえってしまった。
前にも話したけど、私の帰郷を聞いた知り合いの政治家が岸信介元首相との座談会の通訳に私を呼んだ。その政治家に「飛行機代が惜しいので軍艦に乗せてほしい」と頼んだのよ。この人も大物で、鶴の一声で帰りの軍艦は確保できた。その軍艦に乗る前の日、郭雨新さんの家に電話した。今と違って、電話番号はオープンですぐわかったのよ。「お嬢さんから伝言を頼まれました。これから行ってもいいですか」と聞いた。会ったこともないけど、娘さんが日本に留学中と知っていたから。OKをもらって家を訪問し、無事に伝言を届けた。
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