70代の〝大御所〟と呼ばれる記者とエレベーターを待っている間に、こんな話をした。過去、指名打者はMVP（最優秀選手）に選ばれたことがない。それは守備につかないことが大きな要因だが、大谷翔平（ドジャース）は「打力＋走力」の攻撃面での総合力で他を圧倒している。それでもやはり、指名打者であることが投票において不利に働くのだろうかと。私の問いに対し、その記者はこう答えた。「指名打者には守備の貢献が
守備につかないため、同僚のムーキー・ベッツと比べると、オフェンス指標で上回ったとしても、多くの投票者が参考にするWAR（Wins Above Replacement）においてベッツを上回ることは難しい。なにより大谷は試合に出れば出るほど、WARの算出に利用される守備評価のマイナス値が大きくなる。それゆえ、MVPレースはハンディ戦だと形容したのだが、ベッツが死球による左手骨折で離脱したことによって状況が一変した。大谷は現在、ナ・リーグにおいてWARの値が5.2で1位 。2位は4.
アーロン・ジャッジ（ヤンキース）、ガナー・ヘンダーソン（オリオールズ）、ボビー・ウィッテJr.（ロイヤルズ）らが高いレベルでしのぎを削り、WARで大谷を上回る彼らがいるア・リーグであれば、三冠王でも獲らない限りMVPは厳しかったかもしれないが、ベッツの離脱でぐっと可能性が開けた。「守備が下手で、守るところがないから指名打者となった選手と違って、大谷はリハビリのために投げられないだけ。その点で従来の指名打者とは異なる。そこがどう考慮されるのか」 シンシナティ・エンクワイアー紙のゴードン・ウィッテンマイヤー記者の意見だが、かといって、それを数値化するようなデータはない。机上では〝守備機会なし〟で変わらない。WARやwOBA（打席あたり、どれだけ得点に貢献したか）といった指標はあるが、最後は主観であり、投票者は各データの数値から機械的に投票する選手を決めているわけではない。
チームにとって価値ある選手が選ばれるべきなのか、純粋にベストプレーヤーが選ばれるべきなのか。そうした投票基準も様々で、記者によって重視するものも異なる。中には「翔平の守備評価がマイナスというのは理不尽だ」という記者がいてもおかしくない。 ちなみに、ラスベガスなどのスポーツ賭博界における大本命は大谷だ。ドラフトキングス、ファンデュアルといったオンラインサイトはもちろん、米MGMリゾーツ・インターナショナルが運営する「BETMGM」、シーザーズ・エンターテインメントが運営する「シーザーズ・スポーツブック」でも1番人気となっている。メジャー史上で誰も達成していない「50本塁打、30盗塁」への挑戦など、ファンの関心は尽きない=AP
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