ハフポスト日本版ニュースエディター。ロッキング・オン、リアルサウンドを経て現職。興味分野は音楽、映画、ドラマ、文学などカルチャー全般。
宮本さんが危惧するのは、この映画により、オッペンハイマーが「原爆の父」として英雄視され、その「苦悩」や「内面の複雑さ」に共感が集まる一方で、被害者が置き去りにされる構造が、より強固なものになっていくことだ。社会的に『強者』であった彼らが下した決断のもとで苦しむ被害者よりも、加害者に対する共感の方が強くなってしまうのではないか実際に、“共感”の一例として、現代の『民主主義の危機』と重ね合わせる見方もあります。核開発や原爆についてではなく、『すばらしい科学者であったオッペンハイマーが、レッドパージによって没落してしまう。そういうことが起きるのが、トランプ元大統領の出現を機に民主主義が崩壊しつつある今のアメリカと通じる』というもので、政治的な意図で失脚させられたオッペンハイマーに自分を重ねる、という見方です。もちろんそういう見方も可能ですし、(『民主主義の危機』と)重ね合わせざるを得ない社会背景があるのも事実ですが、こうした反応にも『被害者の不可視化』を感じます」この「被害者の不可視化」は深刻で、特に原爆の人的被害は、歴史などの授業でも学ぶことはほとんどないのだという。核兵器の所有や使用につ
このことから、映画で描かれなかったのは、広島や長崎の被害だけではないという点も、注意深くみる必要があると宮本さんは説く。これまでアメリカが行ってきた1000回以上に及ぶ核実験などによる放射能被害、あるいはマンハッタン計画の拠点の一つだったロスアラモスで土地を奪われた先住民の人たちも、映画には登場しないのだ。ロスアラモスは元々プエブロ系の先住民たちの居住地でしたが、国立研究所の設立に伴い土地を強制的に奪われました。今もその周辺に住んでいる人たちは、環境破壊や健康被害を連綿と受け続けています。ですが、そういった歴史は、映画をはじめロスアラモス歴史博物館にさえ展示されていません。後日公開のインタビュー後編では、映画の詳しい描写をもとに「原子力とジェンダー」の関係や、ピュリッツァー賞を受賞した原作の原題「アメリカン・プロメテウス」が象徴するものなどについてみていきます。また、アメリカで発売中のパッケージ版に付属したオッペンハイマーのドキュメンタリーにおける、広島の被ばく者の証言の取り扱いなどについても、宮本さんと考えました。広島県出身。シカゴ大学大学院で修士・博士号を取得。被ばく被害と倫理に関
日本 最新ニュース, 日本 見出し
Similar News:他のニュース ソースから収集した、これに似たニュース記事を読むこともできます。
作品賞最有力の「オッペンハイマー」と冷遇された「バービー」 | WOWOW生中継の顔ジョン・カビラと映画ジャーナリスト・宇野維正がアカデミー賞を語り合う1941年1月5日生まれ、東京都出身。学習院大学卒業後に入社した東映動画(現・東映アニメーション)でアニメーターとして頭角を現し、1978年放送のテレビアニメ「未来少年コナン」にて、初めて単独で演出を担当する。1979年に「ルパン三世/カリオストロの城」で劇場映画監督デビュー。1984年、自身のマンガを映画化した「風の谷のナウシカ」で一躍有名に。その後、1985年に設立されたアニメ制作会社スタジオジブリにて「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「紅の豚」「もののけ姫」といった監督作を発表し、アニメーション作家としての地位を確たるものとする。2001年の「千と千尋の神隠し」では、第75回アカデミー賞の長編アニメーション賞と、第52回ベルリン国際映画祭の最高賞である金熊賞を受賞。
続きを読む »
ディズニーCEO、観客のマーベル疲れを否定 「素晴らしい映画をつくれば人は集まる」 ─ 『オッペンハイマー』を「その完璧な例」と絶賛ポップカルチャーで世界を変える。
続きを読む »
キリアン・マーフィー、『オッペンハイマー』撮影期間中に頭をぶつけたので接着剤で固定していたポップカルチャーで世界を変える。
続きを読む »
『オッペンハイマー』ノーラン監督、核兵器の撲滅による平和を願う ─ 英国アカデミー賞授賞式で受賞スピーチポップカルチャーで世界を変える。
続きを読む »
『オッペンハイマー』IMAX上映決定、全国の劇場50館で同時公開へポップカルチャーで世界を変える。
続きを読む »
「女性が理系を選んだら就職できないと言われた」高校生の質問に、日本ロレアルが行動と言葉で伝えたこととは?ハフポスト日本版ニュースエディター。パートナースタジオ、コンテンツデザインチームを経て、2022年11月より、編集部に異動。関心テーマ:気候変動/生物多様性/人権/ビジネス/SDGsなど。
続きを読む »