8月1日に甲子園球場は開場100年を迎える。「甲子園100年物語」と題した連載で、“聖地”の歴史や名物の秘話などを紹介する。(井之川 昇平)
2003年までグラウンドキーパー長を務めた辻啓之介には、甲子園の芝への強い思いがあった。三つ目は「俺の勝手な野球観だった」と辻は笑う。「打球がゴロで左中間・右中間を抜けて、三塁打になるかどうか。それが野球の醍醐味やと思うから」。90~00年代に阪神の右翼手だった桧山進次郎から“陳情”を受けたことがあったという。「もう少し芝を長くしてくださいよ。他の球場なら追いつけそうなゴロに追いつけない」。辻は「それが野球のおもしろいところや」と言い返して、短い芝を譲らなかった。
桧山と同時代に中堅手で活躍した新庄剛志による強肩バックホームは甲子園を沸かせた。「彼らのクロスプレーを演出していたかもな」と辻は回想する。芝が短めなので、ゴロの球足が速い。つまり、打球が外野手のもとに到達するのが早くなる。もう一つ、辻の挙げた理由が興味深い。「勢いのある打球の方がグラブに収まりやすいやろ。送球体勢に移りやすかったと思うで」。早く捕球するだけでなく、捕球しやすい。だから、捕球から返球への時間が短縮され、バックホーム(あるいは三塁返球)がクロスプレーになる―。短い芝にはそんな副次的効果もあるという。 現在は少し長くなったとはいえ、発育のいい夏は11~12ミリで、他球場より短い。もちろん、芝を短く保つには、労を要す。シーズン中はほぼ毎日、芝刈りをする。辻は現役時代、暇があれば外野を歩き回り、雑草を抜くなどしていた。「土は一日で治せるが、芝は一週間かかる」。その言葉に真実味がある。(敬称略)
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