先日、三井住友カードがANAカードのクレジット一体型「iD」ならびに「楽天Edy」機能の搭載を、2026年3月中にも終了し、4月以降に発行する同クレジットカードには同機能を付与せず、代わりに「Visaのタッチ決済」または「Mastercardタッチ」の機能を付与することを告知して話題になった。
先日、三井住友カードがANAカードのクレジット一体型「iD」ならびに「楽天Edy」機能の搭載を、2026年3月中にも終了し、4月以降に発行する同クレジットカードには同機能を付与せず、代わりに「Visaのタッチ決済」または「Mastercardタッチ」の機能を付与することを告知して話題になった。 今回のニュースは、2025年10月に一部報道機関で同件が報じられた後、カード会社から正式に発表が行われたものだ。対象となるのは以下のカードで、4月以降に発行されるカードでも引き続きiD機能を利用したい場合は、手持ちのスマートフォンのApple PayまたはGoogle Payに当該カードを登録することで、iDのサービスを利用できるようになる。 - ANA VISAプラチナ スーパーフライヤーズ プレミアムカード - ANA スーパーフライヤーズ ゴールドカード(VISA・Master) - ANA スーパーフライヤーズカード(VISA・Master) - ANA VISAプラチナ プレミアムカード - ANA ワイドゴールドカード(VISA・Master) - ANA ワイドカード(VISA・Master) - ANAカード(一般)(VISA・Master) - ANAカード(学生用)(VISA・Master) 三井住友カードからのお知らせのページ ※クリックすると拡大画像が見られます このように、国際ブランド以外の決済機能が付与された一体型クレジットカードから、FeliCa機能が排除される動きが一部で進んでいる。今回は、その背景に少し触れてみたい。 一体型クレカへのFeliCa搭載は高コスト 今回、一体型クレジットカードから姿を消すFeliCaベースのサービスは、iDと楽天Edyの2種類のみだが、最近ではQUICPayや、Suicaなどの交通系ICカードが対象になるケースもある。 例えばオリエンタルコーポレーション(オリコ)では、2023年1月に同社発行のクレジットカードで、iDならびにQUICPayの搭載終了を告知 している。 このほか、三菱UFJ銀行/ニコスでは、2025年3月末をもって「スーパーICカードSuica」の「三菱UFJ-VISA」「三菱UFJ-VISAゴールド」の取り扱いを終了しており、こちらではSuicaがその対象となっている。 オリコは2023年にiDならびにQUICPay機能の搭載を終了している ※クリックすると拡大画像が見られます このように、クレジットカードでのFeliCa機能搭載が終了する理由としては、主に2つが挙げられる。 1つはコストだ。一般に、Visaのタッチ決済などに対応した非接触型クレジットカードであるType-A(MIFARE)ベースのカードに比べ、FeliCa機能を搭載したカードの単価は3倍以上になるといわれている。 これはカードの発注枚数や調達先によって変動するため必ずしも一概には言えないが、「電子マネー用途に対応する」FeliCa機能を搭載することで、コストが大幅に跳ね上がる点は変わらない。 なぜここまでコスト差が生じるのかというと、世界中のスマートカードで採用され、多くのベンダーが製品を提供しているType-A(MIFARE)ベースのカードに対し、FeliCa搭載カードでは2つの機能(Type-AとFeliCa)を提供できる、より高性能で高価なチップを採用せざるを得ない(もしくは2チップ構成となる)ためだ。 さらに、FeliCa自体のライセンス料など、複数の要因が重なり、結果として割高にならざるを得ない。そのため過去には、一体型クレジットカードを発行するカード会社に対し、FeliCaベースで電子マネーサービスを提供する各ブランドが「補助金」を支出し、積極的な搭載を促してきたという背景がある。 またカード会社側も、「多機能な一体型カードを提供することで他社との差別化につながる」という理由から、こうした高コスト構造を受け入れてきた側面があった。 こうして長らく続いてきた一体型クレジットカードの流れだが、物理カードを介した電子マネーの利用が想定ほどには広がらなかったこと、さらにスマートフォンのモバイルウォレット普及によって、電子マネー利用の中心がモバイル側へと移行したことを背景に、カード会社の方針転換が進み、近年では徐々に撤退する傾向が見られる。 国際ブランドによる圧力 2つ目の理由として無視できないのが、国際ブランドによる圧力だ。 例えばANAのページで紹介されている一体型ANAカードの一覧を見ると、搭載されているサービスはiDや楽天Edyだけではないことが分かる。Suica、PASMO、QUICPayなどは、現在も対象として残っている。 ここが重要なポイントだが、iDおよび楽天Edy搭載型カードの発行会社は「三井住友カード」、PASMOは「東急カード」、QUICPayは「JCB」、そしてSuicaは「三井住友カード」だ。 つまり、一体型カードの発行を停止するのは、発行会社が「三井住友カード」であるものに限られており、それ以外は現状維持ということになる。 ある情報筋によれば、国際ブランド、特にVisaは、自社ブランドが印字されたクレジットカードに他ブランドが併記されることを嫌い、こうした一体型クレジットカードの発行に対して、たびたび他ブランドを排除するよう圧力をかけてきたという。 日本国内でApple Payが長らく「Visaの国際ブランド決済」に対応してこなかったのも日本独自の仕様として、クレジットカードをApple Payに登録する際、必ずiDまたはQUICPayの決済手段が割り当てられる仕組みに起因している。(※「VisaカードだからApple Payに登録できなかった」わけではない点に注意) 現在では、デビットカードを中心に、Visaブランド単独でのApple Pay登録が可能となっているが、日本におけるモバイルウォレットの複雑な変遷は、こうした背景と深く結びついている。 今回、ANAカードからiDと楽天Edyが排除された理由についてだが、三井住友カードはVisaと極めて密接な関係にあり、前述した要因などから、一体型クレジットカードを継続して推進する理由が縮小した結果、一気に排除へと舵を切ったと考えられる。 「Suica一体型カードは三井住友カードが発行会社ではないのか?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、これはあくまで推測の域を出ないものの、「Suicaを推進するJR東日本側が拒否し、三井住友カードがそれを受け入れた」という力関係によるものだと考えている。 いずれにせよ、コストバランスや利用状況を踏まえると、発行枚数が少ない一体型クレジットカードを維持することは、さらなるコスト増を招く要因となり得る(発注ロットが減少するため)ことから、最終的には消えゆく運命にあると考えられる。 今回は主にパワーバランスの関係でiDと楽天Edyが矢面に立つ形となったが、いずれは他の電子マネーも同様の状況に置かれ、少しずつ姿を消していくのではないだろうか。.
先日、三井住友カードがANAカードのクレジット一体型「iD」ならびに「楽天Edy」機能の搭載を、2026年3月中にも終了し、4月以降に発行する同クレジットカードには同機能を付与せず、代わりに「Visaのタッチ決済」または「Mastercardタッチ」の機能を付与することを告知して話題になった。 今回のニュースは、2025年10月に一部報道機関で同件が報じられた後、カード会社から正式に発表が行われたものだ。対象となるのは以下のカードで、4月以降に発行されるカードでも引き続きiD機能を利用したい場合は、手持ちのスマートフォンのApple PayまたはGoogle Payに当該カードを登録することで、iDのサービスを利用できるようになる。 - ANA VISAプラチナ スーパーフライヤーズ プレミアムカード - ANA スーパーフライヤーズ ゴールドカード(VISA・Master) - ANA スーパーフライヤーズカード(VISA・Master) - ANA VISAプラチナ プレミアムカード - ANA ワイドゴールドカード(VISA・Master) - ANA ワイドカード(VISA・Master) - ANAカード(一般)(VISA・Master) - ANAカード(学生用)(VISA・Master) 三井住友カードからのお知らせのページ ※クリックすると拡大画像が見られます このように、国際ブランド以外の決済機能が付与された一体型クレジットカードから、FeliCa機能が排除される動きが一部で進んでいる。今回は、その背景に少し触れてみたい。 一体型クレカへのFeliCa搭載は高コスト 今回、一体型クレジットカードから姿を消すFeliCaベースのサービスは、iDと楽天Edyの2種類のみだが、最近ではQUICPayや、Suicaなどの交通系ICカードが対象になるケースもある。 例えばオリエンタルコーポレーション(オリコ)では、2023年1月に同社発行のクレジットカードで、iDならびにQUICPayの搭載終了を告知 している。 このほか、三菱UFJ銀行/ニコスでは、2025年3月末をもって「スーパーICカードSuica」の「三菱UFJ-VISA」「三菱UFJ-VISAゴールド」の取り扱いを終了しており、こちらではSuicaがその対象となっている。 オリコは2023年にiDならびにQUICPay機能の搭載を終了している ※クリックすると拡大画像が見られます このように、クレジットカードでのFeliCa機能搭載が終了する理由としては、主に2つが挙げられる。 1つはコストだ。一般に、Visaのタッチ決済などに対応した非接触型クレジットカードであるType-A(MIFARE)ベースのカードに比べ、FeliCa機能を搭載したカードの単価は3倍以上になるといわれている。 これはカードの発注枚数や調達先によって変動するため必ずしも一概には言えないが、「電子マネー用途に対応する」FeliCa機能を搭載することで、コストが大幅に跳ね上がる点は変わらない。 なぜここまでコスト差が生じるのかというと、世界中のスマートカードで採用され、多くのベンダーが製品を提供しているType-A(MIFARE)ベースのカードに対し、FeliCa搭載カードでは2つの機能(Type-AとFeliCa)を提供できる、より高性能で高価なチップを採用せざるを得ない(もしくは2チップ構成となる)ためだ。 さらに、FeliCa自体のライセンス料など、複数の要因が重なり、結果として割高にならざるを得ない。そのため過去には、一体型クレジットカードを発行するカード会社に対し、FeliCaベースで電子マネーサービスを提供する各ブランドが「補助金」を支出し、積極的な搭載を促してきたという背景がある。 またカード会社側も、「多機能な一体型カードを提供することで他社との差別化につながる」という理由から、こうした高コスト構造を受け入れてきた側面があった。 こうして長らく続いてきた一体型クレジットカードの流れだが、物理カードを介した電子マネーの利用が想定ほどには広がらなかったこと、さらにスマートフォンのモバイルウォレット普及によって、電子マネー利用の中心がモバイル側へと移行したことを背景に、カード会社の方針転換が進み、近年では徐々に撤退する傾向が見られる。 国際ブランドによる圧力 2つ目の理由として無視できないのが、国際ブランドによる圧力だ。 例えばANAのページで紹介されている一体型ANAカードの一覧を見ると、搭載されているサービスはiDや楽天Edyだけではないことが分かる。Suica、PASMO、QUICPayなどは、現在も対象として残っている。 ここが重要なポイントだが、iDおよび楽天Edy搭載型カードの発行会社は「三井住友カード」、PASMOは「東急カード」、QUICPayは「JCB」、そしてSuicaは「三井住友カード」だ。 つまり、一体型カードの発行を停止するのは、発行会社が「三井住友カード」であるものに限られており、それ以外は現状維持ということになる。 ある情報筋によれば、国際ブランド、特にVisaは、自社ブランドが印字されたクレジットカードに他ブランドが併記されることを嫌い、こうした一体型クレジットカードの発行に対して、たびたび他ブランドを排除するよう圧力をかけてきたという。 日本国内でApple Payが長らく「Visaの国際ブランド決済」に対応してこなかったのも日本独自の仕様として、クレジットカードをApple Payに登録する際、必ずiDまたはQUICPayの決済手段が割り当てられる仕組みに起因している。(※「VisaカードだからApple Payに登録できなかった」わけではない点に注意) 現在では、デビットカードを中心に、Visaブランド単独でのApple Pay登録が可能となっているが、日本におけるモバイルウォレットの複雑な変遷は、こうした背景と深く結びついている。 今回、ANAカードからiDと楽天Edyが排除された理由についてだが、三井住友カードはVisaと極めて密接な関係にあり、前述した要因などから、一体型クレジットカードを継続して推進する理由が縮小した結果、一気に排除へと舵を切ったと考えられる。 「Suica一体型カードは三井住友カードが発行会社ではないのか?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、これはあくまで推測の域を出ないものの、「Suicaを推進するJR東日本側が拒否し、三井住友カードがそれを受け入れた」という力関係によるものだと考えている。 いずれにせよ、コストバランスや利用状況を踏まえると、発行枚数が少ない一体型クレジットカードを維持することは、さらなるコスト増を招く要因となり得る(発注ロットが減少するため)ことから、最終的には消えゆく運命にあると考えられる。 今回は主にパワーバランスの関係でiDと楽天Edyが矢面に立つ形となったが、いずれは他の電子マネーも同様の状況に置かれ、少しずつ姿を消していくのではないだろうか。
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