エネルギー政策の中長期的な方向性を示す「エネルギー基本計画」が見直される。緊迫化した国際情勢に対応し、脱炭素を経済成長につなげる有効なビジョンを策定することができるか。素案は2024年中にもまとめられ、年度内に閣議決定される。
2024年5月15日、経済産業省の有識者会合「総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会」において、第7次エネルギー基本計画の策定に向けた議論がスタートした。エネルギー基本計画は3年を目途に見直すものとされており、現行の第6次エネルギー基本計画は2021年10月に閣議決定された。この間、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化など、エネルギーを取り巻く環境は大きく変化した。一方で、脱炭素化の動きは一層拡大し、エネルギー構造転換に対する要請が国際的に強まっている。
日本は、現行計画策定以降、再生可能エネルギーの導入促進および原子力発電所の再稼働を進めてきた。また、世界各国でGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた投資競争が加速するなか、2023年にはGX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)とGX脱炭素電源法(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律)を成立させるなど、「エネルギー安定供給・脱炭素・経済成長の同時実現」を旗印にした取り組みを強化している。この日の会合では、齋藤経済産業大臣の挨拶に続いて、事務局を務める資源エネルギー庁からエネルギーをめぐる状況の整理と課題が示され、その後、各委員から基本スタンスの表明があった。
齋藤経済産業大臣は、「エネルギー安全保障に対する要請がこれまでになく高まっている。我が国は国産エネルギー源が乏しく化石燃料を海外に依存しているが、化石燃料の輸入金額は2022年に34兆円にまで上昇しており、輸出で稼いだ国富を化石燃料の輸入ですべて失っていることになる。AIの社会実装とそれに伴うデータセンターの拡大など、DXの進展により脱炭素電源に対する需要が拡大すると指摘されるなか、それに応えられる脱炭素エネルギーを安定的に供給できるかが国力を大きく左右するといっても過言ではない」とし、「世界がネットゼロという未知の領域へ進み、需要面や技術面における不確実性が高いなかにあって、脱炭素エネルギーへの転換を進めていくことは極めて困難な課題であり、いま日本はエネルギー政策における戦後最大の難所にあると危機感をもっている」との認識を示した。資源エネルギー庁からは、世界的な傾向として、「1.ロシア・ウクライナや中東情勢などの地政学リスクの高まりを受けたエネルギー安全保障への対応」「2.カーボンニュートラルに向けた野心的な目標を維持しつつ多様かつ現実的なアプローチの強化」「3.
ロシア・ウクライナ情勢に関しては、世界的なLNGの需給逼迫(ひっぱく)と価格高騰が発生していること、とくにLNGのアジア価格は2019年頃と比較して2022年には平均で約6倍の歴史的高値を記録したことなどが示された。中東情勢については、原油の9割以上をそこからの輸入に依存する日本にとって、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化やイスラエル・イラン間の軍事的緊張は、エネルギー安全保障に直結するものであることが強調された。また、鉱物性燃料の大半を海外に頼る日本の経済構造は、需給タイト化による突然の価格上昇リスクを受けやすい。脱炭素に関しては、まずカーボンニュートラル表明国数の拡大状況が紹介された。COP25終了時点(2019年12月)でカーボンニュートラルを表明している国はGDPベースで3割に満たない水準だったが、2024年4月にはG20すべての国を含む146カ国が年限付きのカーボンニュートラル目標を掲げており、GDPベースでは約9割に達している。その流れはいっそう強まっており、COP28(2023年12月)では、2030年までに再エネ発電容量を世界全体で3倍に、省エネ改善率を世界平均で2倍に拡
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