利用が少なくても、救いの手が差し伸べられて助かる鉄道。一方で、被災したまま力尽きる鉄道。ローカル線復旧・存続は、どこで道が分かれるのか。
しかし、車窓に絶景が多い只見線は観光ツアーの定番ルートでもあり、景色を眺めに海外から来訪する乗客も多かった。なかには当時の終点・会津川口駅を降りてぞろぞろと雪山に歩いていく外国人観光客もいたという。地元自治体も廃止容認に傾いていたが、宿泊客の激減などもあり、只見線そのものを観光資源と捉え、いつしか復旧を求めるようになった。(1)復旧費用のうち、「県・沿線17市町村」「国」「JR」が3分の1ずつ負担(4)年間5億~6億円の予算をかけて「只見線利活用プロジェクト」で、幅広い誘客策を実施復旧費用の3分の1を負担する必要があるが、もともとは「JR4分の3、自治体4分の1」として提案されたもの。福島県とJRの関係の維持を考えれば、何とか許容できる範囲だったのだろう。かつ、(4)の利用促進プランは他地域と桁違い(せいぜい数百万~数千万円)の予算とマンパワーをかけたもので、再開業後もしっかり誘客を行う覚悟を示したといえる。
JR東日本は、復旧費用の大きさだけでなく、今後の持続性に懸念を示していた。これに対して福島県と沿線市町村は徹底した費用負担・軽減策と収入増加の対策を示し、廃止の意向を翻意させ、復旧費用の補助を国から仰ぐことにも成功した。肥薩線の復旧では、熊本県はさらに踏み込んだ。まずは復旧費用の235億円を、河川工事・道路工事・治山工事などと連携することで、76億円まで圧縮。この額を「国」「自治体」「JR九州」で3分の1ずつ(約25.3億円)負担するプランを策定したのち、財政が厳しい沿線12市町村分を県が全額負担することも表明。「7割を別事業で国が負担、2割を県が負担、残り1割はJR九州担」という復旧費用の負担案をJR九州に提案し、了承を得た。
かつ、上下分離案に必要な年間の維持費についても、年間1.2億円といわれていた12市町村の負担を5000万円まで圧縮し、決して一枚岩ではなかった市町村の意見をまとめ上げた。なお、熊本県はほかにも「JR豊肥本線」「南阿蘇鉄道」「くま川鉄道」などでも率先して復旧への道筋をつけている。 JR九州は古宮洋二社長自ら「税金を投入して復旧しても、利用者が減れば意味がない」「イベントのような一時的な促進策ではなく、日常的に利用する乗客を増やす方策が不可欠」と、肥薩線の復旧に当初から難色を示していた。最終的に熊本県の費用負担案に押し切られて復旧を決断したが、それでも「日常利用の増加」などの注文を熊本県に伝えている。
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