日銀の利上げにもかかわらず円安が進む現状について、その背景にあるインフレ期待と、海外中央銀行の金融政策の変化を分析。2026年の国際金融市場を見通し、円安のリスクと日本の課題を指摘する。
12月19日の日銀 金融政策 決定会合後、「 利上げ したのに円安になったのはなぜか」という質問を筆者は頻繁に受けている。唐鎌大輔氏のコラム。写真は都内・浅草寺で2021年12月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)。12月19日の日銀 金融政策 決定会合を経て、「 利上げ したのに円安になったのはなぜか」という質問を筆者は頻繁に受けている。この点について、日銀の情報発信のまずさに終始する議論が目立つが、限られた手札で戦う日銀に過度な期待を寄せるのは適切ではない。中立金利(厳密には、今回の 利上げ 局面のターミナルレート)がどこにあるかは不明だが、市場コンセンサスよりも高めの「1.
75%」と仮定しても、利上げはあと4回(プラス100ベーシスポイント、bp)しかできない。日銀は1回の利上げで円安修正を図りたいはずだ。しかし、日銀が孤軍奮闘しても、政治家周辺の経済アドバイザーが様々なメディアで拡張的な財政・金融政策の有効性を説き、一部記事は海外市場にも英語で配信されている。海外市場参加者は、これを材料に取引することも考えられる。このような状況は、1回の利上げで最大効果を上げようとする日銀にとってノイズとなる。つまり、「プラス25bpの利上げ」程度では、高市政権のインフレ期待にかき消されてしまう可能性が高いというのが現状だ。結局、「インフレ期待のスピードに利上げが追いついていない」という現実が、利上げ後の円安の背景にある。それぞれの主張はあるだろうが、債券・為替市場の安定を取り戻すには、奔放なリフレ政策の情報発信を抑制し、高市政権の良い意味での変節を市場に示す必要がある。金融市場に疑心があるのは明白であり、疑心を持つ金融市場(特に為替市場)に正論は通用しない。この利上げと円安の関係性に関する議論は、国内事情にのみ着目している。利上げすれば円安になるという期待の裏には、海外金利が現状維持または低下するという前提がある。しかし、この点は不確実になっている。海外金利が再上昇した場合、日銀の利上げで一時的に円安が修正されても、すぐに元の水準に戻ってしまうだろう。2026年の国際金融市場を見通す上で、この視点は非常に重要である。\海外の中央銀行の状況を見てみよう。例えば、オーストラリア準備銀行(RBA)は2026年2月に利上げを示唆しており、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)にも同様の憶測がある。7月以降、利下げ停止局面に入っている欧州中央銀行(ECB)では、12月8日にシュナーベル理事が「市場と調査の参加者は、近いうちでなくとも、次の金利の動きが利上げになると予想している。そうした見通しに違和感はない」と発言し、注目を集めた。同理事は9月にも「世界の中央銀行が再び利上げに踏み切る時期は、多くの人が現在想定しているよりも早まる可能性がある」と述べ、「次の一手」が利上げである可能性を示唆していた。ECBのタカ派的な姿勢は、ドイツ出身理事の個人的なコメントではなく、12月3日にはチーフエコノミストのレーン理事が、ユーロ圏のインフレ率が最近上昇しており、2026年初めのインフレ率低下というECBの予測に疑問が生じていると発言したことをロイターが報じている。12月18日のECB政策理事会後のラガルド総裁の会見でも、利上げの議論があったかどうかの質問が出ている。12月のラガルド氏の会見を詳細に見ると、エネルギー価格の下落によるベース効果の剥落により、「2026年初頭にはユーロ圏消費者物価指数(EU基準=HICP)が低下する」というECBの予測に対し、インフレの低下圧力が予想ほど確認できず、その背景には堅調な賃金状況があるという問題意識が示された。さらに、2026年2月の政策理事会では、「人工知能(AI)の台頭による設備投資意欲の高まりが成長率を押し上げている可能性」について踏み込んだ分析が行われるという発言も注目された。このような政策理事会の問題意識は、ユーロ圏経済の潜在成長率およびこれと整合的な自然利子率(または中立金利)が上昇している可能性を示唆している。利上げは性急かもしれないが、「利下げはもう不要」という点については意見集約が完了していると見て良いだろう。次に、米連邦準備理事会(FRB)について見てみよう。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を振り返ると、投票権のある地区連銀総裁2名に加え、4名の潜在的な反対票があったことがわかる。雇用・賃金市場に対する潜在的なインフレ圧力が、地区連銀総裁を中心に警戒されている現状が、2026年に入ってすぐに後退するとは考えにくい。トランプ大統領が望むような大幅な利下げについて、FOMC内で意見集約を図るのは困難である可能性が高い。現時点では、2026年におけるFRBの利下げ回数は、多くても2回程度と予想される。トランプ氏の影響を受けた新議長や新理事が就任した場合、FOMCが急激にハト派に転換する可能性もゼロではない。しかし、その場合でも、政治的な緩和意欲を反映した金融政策が、逆にインフレ期待を煽る可能性も否定できない。市場の思惑に反して、政治的な意向を貫いても、良い結果にはならないだろう。以上の状況を踏まえると、2026年のFRBやECBなど海外の中央銀行に関する注目点は、「何回利下げできるか」ではなく、「利下げが停止されるか」、あるいは「利上げを示唆する方向に転換するか」にシフトする可能性がある。例えば、2026年9月までの市場の利下げ回数に関する織り込みは、ECBでゼロ回、FRBでも2回程度である。この程度なら、容易に覆される可能性がある。欧米の中央銀行が本当に利上げに転じた場合、円安抑制を目指す日本にとっては悲劇的な展開となるだろう。プラス25bpの利上げを数ヶ月かけて慎重に検討する日銀に対し、FRBやECBは、一度方向性を定めれば、長期間その方向で政策金利を調整する傾向がある。2026年中にFRBやECBが実際に利上げに転換することは難しいだろう(それはリスクシナリオである)が、市場は最も極端な展開しか織り込まないため、中央銀行から利上げ転換の可能性が示唆された時点で「1回目の利上げ」を予想するゲームが始まってしまうだろう。2026年後半、そのような展開は十分にあり得る。それは、次の円安相場が150円台から再開する可能性を示唆している。もちろん、円金利が段階的に引き上げられれば、状況は異なる。しかし、欧米の利上げ局面と同じペースで利上げできるほどの胆力は、政府と日銀にはないだろうし、そこまで円安修正に尽力するのは、もはや金融政策ではなく、通貨政策となる。「国際金融のトリレンマ」に倣えば、「自由な資本移動」と「安定した為替相場」を実現し、「金融政策の独立性」が半ば放棄されたような構図である。*このコラムは12月24日にLSEGグループのニュース・データ・プラットフォームWorkspaceに掲載されました。当時の情報に基づいています。*唐鎌大輔氏は、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミスト。2004年慶應義塾大学経済学部卒業後、日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。06年から日本経済研究センター、07年からは欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向。08年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに携わった。著書に「弱い円の正体 仮面の黒字国・日本」(日経BP社、24年7月)、「『強い円』はどこへ行ったのか」(日経BP社、22年9月)など。新聞・TVなどメディア出演多数。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません
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