安政年間の絵画に描かれた躍動感あふれる馬の姿を紹介。盛岡藩主 南部利剛の巡見と、馬を愛した藩主の逸話を紐解き、盛岡藩の歴史と文化に迫ります。
蓋の摘みに、いななき、駆ける馬の姿が躍動感たっぷりに表現された、見事な作品についてご紹介いたします。この作品は、安政3年(1856年)に15代藩主 南部利剛 が 盛岡藩 北部の海岸を視察した際、巡見地の名所15ヶ所を、随行した 盛岡藩 士
中村伊代治に描かせたものの一部です。特に目を引くのは、馬の躍動感を捉えた表現です。蓋の摘みには、いななく馬が配置され、その周囲には一繋ぎになり駆け巡る馬たちが描かれており、生き生きとした動きが伝わってきます。これは、単なる絵画ではなく、当時の盛岡藩の文化や風景を鮮やかに伝える貴重な記録と言えるでしょう。また、この作品からは、南部利剛の視察の様子や、中村伊代治の卓越した描写力も窺い知ることができます。当時の藩主がどのような場所を訪れ、何を見ていたのか、そしてそれをどのように記録したのかを知ることは、盛岡藩の歴史を深く理解する上で非常に重要です。このような視点からこの作品を鑑賞することで、より一層、当時の人々の生活や文化に思いを馳せることができるでしょう。作品全体から溢れ出る躍動感は、見る者の心を強く惹きつけ、まるでその場にいるかのような臨場感を味わうことができます。\続いて、この作品が描かれた背景にある歴史的な出来事と、その内容について詳しく見ていきましょう。この作品には、南部利剛自身も木崎野で見学した、馬を追い込んで捕獲する「二歳駒野取」の様子が描かれています。野取を見物する人々の姿も描かれており、この行事が盛岡藩の風物詩であったことが伺えます。これは、盛岡藩における馬産業の重要性を示すものであり、当時の人々の生活と密接に結びついていたことを物語っています。「野取」は、単なるイベントではなく、馬の生産と流通を支える重要な行事であり、藩の経済にも大きく貢献していたと考えられます。また、この作品を通して、当時の人々がどのように馬と関わり、馬産業をどのように支えていたのかを知ることができます。さらに、この作品は、盛岡藩の文化的な側面を理解する上でも重要な手がかりとなります。当時の人々がどのような価値観を持っていたのか、どのようなものを美しいと感じていたのかを知ることで、盛岡藩の文化的な深さを感じることができるでしょう。このように、この作品は、歴史的な背景、馬産業の重要性、そして文化的な価値という、多角的な視点からその魅力を理解することができます。\最後に、この作品と関連する、盛岡藩主の逸話についても触れておきましょう。盛岡藩主の側近くで勤務する役人の執務日誌には、興味深い記録が残されています。ある日、霍乱症(急性腸カタル)で亡くなった11代藩主 南部利敬の愛馬「千歳」を、桜馬場の馬頭観音脇にお堂を建てて祀るように命令が出されました。千歳は、20歳になる五戸産の栗毛の馬で、利敬は大変気に入っており、江戸参勤の際には必ず引き連れ、特に幕府の浅草御蔵の警備の際には、この馬にのみ乗っていたと言われています。この逸話からは、南部利敬の馬に対する深い愛情が感じられます。それは、単なるペットに対する愛情ではなく、信頼と絆で結ばれたパートナーのような関係だったのでしょう。このように、作品と関連する逸話を知ることで、盛岡藩主の人となりや、当時の社会における馬の役割をより深く理解することができます。また、盛岡城跡公園の一角にある町なかミュージアムでは、この作品を含む、盛岡藩の歴史や藩主南部家に関わる資料が展示されています。1階は無料で、盛岡を代表する祭りや旬の観光情報を紹介しており、2階展示室(有料)では、より詳しい展示を見ることができます。盛岡を訪れた際には、ぜひ足を運び、これらの貴重な資料を通して、盛岡藩の歴史と文化に触れてみてください
