カヤバ(KYB)は1月29日、東京オートサロン2026で発表&発売を開始したアフターマーケット向けとしてはカヤバ初となる電子制御サスペンションシステム「ActRide(アクトライド)」の説明会を実施した。
こうしたセミアクティブサスペンションの技術は、欧州では2018年にStellantisの高級車ブランドDSオートモビルの「DS7クロスバック」に純正採用されたほか、国内でもアイシンと共同開発した製品が トヨタ やレクサスに採用されている。 カヤバ オートモーティブコンポーネンツ事業本部 技術統括部 開発センター製品開発室 室長の古田雄亮氏は、新製品の アクトライド について、「この製品は、スマートフォンを使ってショックアブソーバーの減衰をコントロールする新しいサスペンションシステムです。専門的な作業は一切必要とせず、直感的に自由に好みの乗り味の調整できる次世代のサスペンション製品です」と説明。続けて、技術統括部 電子技術部第1開発室 専任課長の宮谷修氏は、「 カヤバ では『今のクルマの乗り心地をよくできないかな?』『運転中にセッティングを変更できないかな?』『子供が寝ているから起こしたくないな?』など、クルマを運転するユーザーは乗り心地に対していろいろな悩みを抱えていると考え、そのさまざまな悩みを解決するために今回の製品の開発をスタートしました」という。また宮谷氏は、「自分のスマホで直感的に操作することにより、まるでスマホで音楽を選ぶかのように乗り心地を選べるのが アクトライド です」と使い勝手のよさをアピール。 アクトライド の基本構成は、「 アクトライド アプリ」「コントローラー」「ショックアブソーバー」の3つで、アプリをインストールしたスマホとコントローラーはBluetoothで接続。コントローラーは3軸加速度と3軸角速度をワンチップで計測できる小さな「IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測ユニット)センサー」を内蔵し、コントローラーと4本のショックアブソーバーは配線で接続する。 「 アクトライド 」のシステム構成。コントローラーユニットは、これまでのノウハウを生かし、振動・温度・防水・電気耐性・ノイズ・耐久性などはOEM車載要求相当の信頼性試験に合格。待機電流は0.
01mA以下と省電力設計となっている コントローラー内部のIMUセンサーは、加速度センサーが並進運動を、ジャイロセンサーが回転運動を検出し、加速度と角速度を高精度に算出し、算出結果から車両の挙動(姿勢や軌跡)を把握。状況に応じた最適な減衰力をリアルタイムに反映させていくのが、アクトライドの仕組みとなる。 コントローラーとショックアブソーバーを装着したら、アプリから初期設定を行なう必要がある。装着車種や駆動方式、コントローラーを車両のどのあたりに設置したか? またコントローラーの向きの設定。最後に水平な状態かの確認を行なう。とにかくコントローラーが車両の挙動を把握して信号を出すため、初期設定がとても重要になる。ただし、現在発売中のハイエース(200系)用には、取扱説明書にコントローラーの取り付け推奨位置なども記載してあるとのことで、その通りに取り付ければ基本的には大丈夫とのこと。 また、コントローラーとアプリはBluetoothで接続するが、パスコードの入力は初回のみ。次回以降は自動的に乗り込めば接続される。そのほかにも、家族数人でアプリを使用した場合は、最後に接続した人が優先的に接続され、複数人が同時に接続されることもない。アクトライドの減衰力設定は6つ登録できる仕様で、あらかじめ「Comfort(コンフォート)」「Normal(ノーマル)」「Sport(スポーツ)」の3つが設定されているほか、自分で定めた減衰力値を保存できる「Custom(カスタム)」が3つ用意されている。それぞれの名称は自由に変更できる。 あらかじめ設定されている「Comfort」「Normal」「Sport」の3つも、それぞれ数値の変更も名称の変更も可能だが、リセット機能は備わっていないので、初期状態に戻したい場合は、説明書を見て自分で数値を再度設定する必要がある 減衰力の細かい調整はパラメータ変更画面で行なう。画面の上段はベースとなる減衰力を調整するエリア。下段がさらに細かい“乗り味”の調整を行なうエリア。ベース減衰は、前後サスペンションの減衰力を0~100の間で調整可能で、左右別々の設定はできない。下段にある「Ride(ライド)」は、バーの赤いポインターを左側のコンフォートに寄せるほどゆったりとした乗り心地に、右側のスポーツに寄せるほどしっかりとした乗り心地になるセッティング項目。 技術統括部 開発センター 製品開発室 専任課長の稲満和隆氏は、「従来の減衰力固定式ショックアブソーバーの場合、低周波が増加するとフワフワした乗り心地になってしまい、中周波が増加するとひょこひょこと揺さぶられてしまうので、車体と空中の間に仮装ダンパーを設定し、それと同じ減衰を発生させるスカイフック制御の技術を使い、低周波と中周波の両方の振動を抑えて、まるで空中から吊り下げられているようなフラットな乗り心地を実現できる」と解説してくれた。また、「Handling(ハンドリング)」は、赤いポインターを左側のコンフォートに寄せるほどゆったりとしたしなやかな操縦性に、右側のスポーツに寄せるほどキビキビと軽快な操縦性になるセッティング項目。 例えば高速道路や長い一般道をまっすぐ走っている際に、「ライド」をコンフォート方向に寄せておけば、路面のつなぎ目や段差などを通過した際は、積極的に減衰力に介入はせず、ゆったりとした動きになる。また、ワインディングのRのきついコーナーでステアリングを大きく切った際、「ハンドリング」をスポーツ方向に寄せておけば積極的に減衰力を高めて、車体のロールを抑え、軽快なコーナリングをサポートしてくれる(もちろんタイヤのグリップ力の限界は越えられないが)。さらに、アクセルON時やハードブレーキングの時も、スポーツ方向に寄せておけば、車体の前後の動きも抑制してくれるので、よりキビキビした走りに近づけてくれる。さらに「Speed Adpt(スピードアダプト)」は、スマホのGPS情報から速度データを算出し、車速に応じて減衰力を高めてくれるセッティング項目で、ポインターを右側のAdaptive(アダプティブ)に寄せるほど、高速走行域で減衰力が高くなり、走行安定性を高め、ふらつきを抑制してくれる。ただし乗り心地としては硬くなる方向という。なお、スマホ未接続時はスピードアダプトの機能はOFFとなる。またアクトライドには、減衰力を自動的に制御してくれる「オートモード」も搭載していて、6軸IMUセンサーからの情報を活用し、乗り心地、操縦性、車速連動の制御をすべて自動で行ない快適な乗り心地を提供してくれるという。そのほかにも、アクトライドは「モニター表示」機能も備えていて、4輪のリアルタイムの減衰力に加え、6軸IMUセンサーで検知した車両の挙動を「Gボール」で可視化してくれるほか、「前後のピッチング量」「左右のロール量」「回転量(ヨー)」もメーターで分かりやすく表示してくれる。古田室長によると、減衰力のリアルタイム制御を行なうセミアクティブサスペンションと聞くと、ついつい高級車やスポーツカー向けの製品だと思われがちだが、実際にはミニバンや貨物運送車両など、搭乗人数や積載物の量でクルマの重心が大きく変更する車両のほうが効果を大きく感じられるとのこと。特に物流で使用するハイエースなどは、空荷と満載状態ではリアのショックアブソーバーの仕事量は大きく異なり、アクトライドを装着すると走りが激変するという。 なお、車室内にコントローラーユニットを設置して、ボタンやダイヤルで減衰力調整を行なえる商品も他メーカーから出ているが、カヤバのアクトライドはスマホを使用するため、新たにコントローラーを製造する必要もないし、在庫を抱えることもないので、カヤバとしてもユーザーとしてもコスト面でメリットが高い。さらにソフトウェアは後からアップデートできるので、末永く利用できるのも大きなポイントという。
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