Twitter、CEOにヤッカリーノ氏 広告強化へマスク氏表明
【シリコンバレー=渡辺直樹】米起業家のイーロン・マスク氏は12日、ツイッターの運営会社であるX社の最高経営責任者(CEO)に米メディア大手NBCユニバーサル(NBCU)の広告部門トップ、リンダ・ヤッカリーノ氏を迎えると明らかにした。広告主との太いパイプを持つ同氏の登用で収益基盤を立て直す。マスク氏はツイッター上で「リンダはまず事業運営に集中し、私は製品デザインと新技術に専念する」と述べた。同時に「リンダとともにツイッターを『X』、すなわちすべての機能を持つ(万能)アプリに変えていく」と投稿した。
ヤッカリーノ氏はペンシルベニア州立大学を卒業後、米メディア複合企業のターナー・ブロードキャスティング・システムを経て2011年にNBCUに入社した。「グローバル広告・パートナーシップ」部門の会長として、国内外の広告販売やマーケティング戦略を取りまとめてきた。 広告付きで無料視聴できる動画ストリーミングサービス「ピーコック」の立ち上げに関与するなどデジタル関連事業に力を入れ、テクノロジーの知見も持つ。また公共広告の非営利団体で会長を務め業界で顔が広いとされる。ツイッターはマスク氏による買収以降、イメージ悪化を恐れる大手企業を中心に広告離れが起きている。22年10〜12月にはツイッターへの米広告出稿上位10社のうち8社が前年同期比で広告費を減らした。米調査会社は23年のツイッターの広告収入は前年比で約3割減ると予測。デジタル広告市場のシェアは1割程度とグーグルやメタに遠く及ばないのが現状で、ヤッカリーノ氏の登用で立て直しを図る。
ツイッターは2021年まで2期連続で最終赤字だった。マスク氏は買収後に大規模なリストラに着手。コスト減のほか、有料サービス「ブルー」に新機能を加え課金サービスへの顧客誘導も進めてきた。さらに広告収入をてこ入れすることで、将来投資も含めた成長戦略を描ける企業への転換を急ぐ。広告主が戻るためには交流サイト(SNS)としての公共性や安全性が欠かせない。マスク氏は「言論の自由の絶対主義者」を標榜してツイッターを買収した。マスク氏はツイッター上で自由奔放に発言し、明確な基準を示さないまま既存メディアや有名人の認証や表記などの仕様の変更も繰り返した。一部から「個人SNS」といった批判も出ている。 マスク氏は4月18日にメディアマーケティングのイベントでヤッカリーノ氏と対談し、ツイッターの今後について話した。ヤッカリーノ氏は「イーロンは誰でも継続的に(機能改善の)フィードバックにアクセスできるように約束した」と指摘。「言論の自由がこの国の根幹であるならば、どうすれば(ツイッターが)もっと良くなるのか、発言していくことがみんなの責務だ」と話していた。