Beyond the Breaking News

“テックブロ”が築いた価値観は崩壊する──特集「THE WORLD IN 2025」

テクノロジー / Technology ニュース

“テックブロ”が築いた価値観は崩壊する──特集「THE WORLD IN 2025」
Vol.55 The World In 2025ビジネス / Businessアイディア / Idea

米国のテック業界で働く“テックブロ”たちの華やかな世界や、彼らが形成した男性優位の価値観は崩れ去っていく。フェミニズム運動や労働運動の連携によって社会的な監視が強まり、暗黙のルールの崩壊が始まることになる。

世界中のビジョナリーや起業家、ビッグシンカーがキーワードを掲げ、2025年の最重要パラダイムを読み解く恒例の総力特集「THE WIRED WORLD IN 2025」。バージニア大学工学社会学部准教授のコリーン・M・キャリガンは、いわゆる“テックブロ”たちが形成した男性優位の価値観が、社会的な監視が強まることで崩壊していくと予見する。 米国のテック業界で働く男性たち、すなわち「テックブロ(Tech Bro)」が放つ輝きが薄れつつある。2025年にはコンピューティング業界の華やかさも引き続き失われていくことだろう。 ほかのSTEM(科学・技術・工学・数学)分野では労働人口の拡大が進んでいる。しかし、革新的な分野であるはずのコンピューティング分野では、女性やノンバイナリー(性自認が男女のどちらでもない人々)の採用と維持、尊重に失敗し続けている。 例えば、コンピューティング分野における職場文化の原動力となっている基本的な価値観として、明確な質問、抽象化、攻撃性、性差別、利他主義(社会的利益に貢献すること)の軽視などが上げられる。テックブロの間で“暗黙のルール”を形成しているのは、こうした価値観と、テック企業において偏見や差別、ハラスメントによってこのような価値観を維持する方法だ。 この暗黙のルールが、セクシャルハラスメントに対する寛容な態度を長く温存させている。また、コンピューティング分野で深刻な差別を是正できない原因にもなっている。 実際、コンピュータープログラミングの職において女性が占める割合は、わずか21%だ。そのうちアフリカ系の米国人はわずか2%、ラテン系はわずか1%である。 また、この分野では全体的に女性の割合が非常に少ないが、業界で人員削減が実施される際に及ぶ影響は女性に偏っている。例えば、22年にテック業界で起きた大量のレイオフでは、解雇された従業員のうち約70%が女性だった。 これはビッグテックにおける個人的な経験とも一致する。当時の勤務先が上場すると、すぐに株主は毎年のレイオフを要求した。そして最初の2年間、わたしの部署で解雇されたのは女性だけだったのだ。 さらに、この暗黙のルールを取り仕切っているリーダーたちは、莫大な富と巧妙なブランディングのおかげで、自分たちのことを魔法使いか司祭だと信じている。権威主義に傾倒し、不満や抵抗を抑えつけようとするのだ。 このような行動を真似するプログラマーたちもいる。例えば、23年に開催された女性とノンバイナリーのテックワーカーのための世界最大の就職フェア「グレース・ホッパー・セレブレーション」には、テックブロたちが大挙して押し寄せたのである。話を聞いた女性参加者によると、列で男性たちに割り込まれたり、暴言を吐かれたり、言葉による嫌がらせを受けたりしたという。 支配的なエリートを恐怖に陥れるもの この2025年、アルゴリズムの大御所たちによって支配された未来への歩みは行き詰まることだろう。フェミニズム運動と労働運動が連携することで、テック文化に対する社会的な監視が強まることになる。 こうした取り組みによって、暗黙のルールの崩壊が始まるだろう。暗黙のルールを取り仕切っているリーダーたちは、その社会革命的な影響について大言壮語する。だが、わたしの調査に参加した人々は、自分の技術スキルをほかの人々のために使おうとして妨害されたと感じていた。 そのひとりであるリンは、障害者を支援するために開発した視線追跡デバイスがマーケティングの分析に転用されたと報告している。またショーナの話では、研究室の女性仲間がコンピューティング分野で権利を奪われた人々を支援するプロジェクトに取り組んでいたとき、「アクセシビリティ・ビッチ」というあだ名をつけられたという。 ビッグテックが社会問題の解決策を提供する代わりに空約束を繰り返し、税金逃れや規制撤廃に努め、賃金格差に拍車をかけていれば、一般大衆のテック業界に対する幻滅はますます深まることになる。2025年には、ショーナやリンのような利他的な取り組みが阻止されることで、コンピューティングが人類に果たす役割に対する懐疑的な見方がさらに強まるだろう。 権利を奪われたテックワーカーたちは、暗黙のルールを仕切るリーダーたちが広く宣伝されている利他主義を履行していないだけでなく、自社製品の社会的な害悪を隠蔽しようとしていることについて、責任を追及する動きを今後も後押ししていくはずだ。 テックワーカーによる最近の組織化活動が示すように、労働者間の緊密な連携こそが、こうした支配的なエリートを最も恐怖に陥れる。例えば、18年には世界中で20,000人以上のグーグル社員が、社内のセクハラや組織的な人種差別に反対して抗議デモを実施した。2025年、テック業界における軍事化や人種差別、性差別、経済的搾取に反対する運動の勢いは、テック業界のリーダーたちが宇宙へ打ち上げるロケットの勢いを上回ることだろう。 コリーン・M・キャリガン | COLEEN M.

CARRIGAN バージニア大学工学社会学部准教授。コンピューティング分野を中心に、STEM(科学・技術・工学・数学)領域への人々の参加拡大や不平等との闘い、一般市民の関与の強化を研究テーマとしている。テック企業でシニアマネジャーを務めたのち、学術分野に転身した。『Cracking the Bro Code』の著者。 (Originally published in the January/February 2025 issue of WIRED UK magazine, edited by Daisuke Takimoto) Related Articles 『WIRED』の「THE WIRED WORLD IN 20XX」シリーズは、未来の可能性を拡張するアイデアやイノベーションのエッセンスが凝縮された毎年恒例の大好評企画だ。ユヴァル・ノア・ハラリやオードリー・タン、安野貴博、九段理江をはじめとする40名以上のビジョナリーが、テクノロジーやビジネス、カルチャーなど全10分野において、2025年を見通す最重要キーワードを掲げている。本特集は、未来を実装する者たちにとって必携の手引きとなるだろう。 詳細はこちら。

このニュースをすぐに読めるように要約しました。ニュースに興味がある場合は、ここで全文を読むことができます。 続きを読む:

wired_jp /  🏆 73. in JP

Vol.55 The World In 2025 ビジネス / Business アイディア / Idea ダイバーシティ / Diversity 人種差別 / Racism シリコンバレー / Silicon Valley

 

日本 最新ニュース, 日本 見出し

Similar News:他のニュース ソースから収集した、これに似たニュース記事を読むこともできます。

人道支援団体がAIを有効活用するようになる──特集「THE WORLD IN 2025」人道支援団体がAIを有効活用するようになる──特集「THE WORLD IN 2025」ついにAIが本当の意味で「人の役に立てる」チャンスが到来した。ただ、そのためには「最も必要とされている場所」でAIが使われるようにしなければならない。
続きを読む »

1・25開催の『Welcome to Pen 2025』に細野晴臣が出演決定、水原希子&水原佑果とトークを展開1・25開催の『Welcome to Pen 2025』に細野晴臣が出演決定、水原希子&水原佑果とトークを展開Penが主催するイベント『Welcome to Pen 2025 CREATORS FES.』を、2025年1月25日(土)に虎ノ門ヒルズステーションタワーのTOKYO NODEにて開催する。特集「細...
続きを読む »

AIの環境負荷が気候変動対策の足かせとなる──特集「THE WORLD IN 2025」AIの環境負荷が気候変動対策の足かせとなる──特集「THE WORLD IN 2025」データセンターはすでに世界の電力の2%を消費し、冷却には大量の淡水を必要とする。生成AIの貪欲な資源消費は、現実の環境に多大なコストをもたらしているのだ。
続きを読む »

不確実な未来には不確実性の予測スキルが求められる──特集「THE WORLD IN 2025」不確実な未来には不確実性の予測スキルが求められる──特集「THE WORLD IN 2025」予測は芸術であり科学でもあって、正確さと運の両方に左右される。だが、未来を予測し前もって計画を立てるマインドセットを育てていくことはできる。
続きを読む »

ビッグテックの終焉:メレディス・ウィテカー ──特集「THE WORLD IN 2025」ビッグテックの終焉:メレディス・ウィテカー ──特集「THE WORLD IN 2025」政治家からべンチャーキャピタルまで、あらゆる人々が金儲け第一主義のビッグテックに愛想を尽かしつつある。こうしたなか、大企業に代わるオープンで信頼できる仕組みをつくり上げる好機が訪れつつある。
続きを読む »

おしゃれなファッションはストリートから学ぶ!おしゃれなファッションはストリートから学ぶ!GINZA 2月号 「SNAP COLLECTION 2025」特集 〜Another Edition〜
続きを読む »



Render Time: 2026-06-02 09:24:19