10代、20代の若者が「闇バイト」という名の犯罪で摘発されるケースが増えている。多くの場合、「高額報酬」「初心者歓迎」などの甘い言葉につられ、「1回だけ」「危ないと思ったらやめればいい」と安易に接触...
10代、20代の若者が「闇バイト」という名の犯罪で摘発されるケースが増えている。多くの場合、「高額報酬」「初心者歓迎」などの甘い言葉につられ、「1回だけ」「危ないと思ったらやめればいい」と安易に接触。交流サイト(SNS)を入り口に巻き込まれていく。しかし、実態は組織的な特殊詐欺や窃盗の片棒を担がされ、やめようとしても脅され、抜け出せなくなる。道警は「闇バイトは仕事ではなく犯罪。危険な実行役で捨て駒として簡単に切り捨てられる」と注意を喚起する。
道警によると、特殊詐欺グループが「闇バイト」と称して現金回収役の「受け子」などの実行役を募集する事件は、2018年ごろから相次いでいる。道内の逮捕者は22年に27人。年代別に見ると20代が15人と最も多く、10代も3人に上る。SNSを通じて勧誘に応募したのは27人中10人で、うち9人が10、20代だった。さらに今年1~7月末の逮捕者は29人と既に昨年を上回っている。首都圏などで相次いだ広域強盗事件の実行役が「闇バイト」と称して、SNSで勧誘されていたことが明らかになっている。道内でも特殊詐欺グループが同様の手法で実行役を募るケースが起きた。今年2月、札幌市内の貴金属取扱販売店で高級腕時計41点(計約1700万円相当)が盗まれた事件では、実行役や売却役として帯広市と旭川市の高校生らが逮捕されている。いずれもSNSで知り合って指示を受けていたとみられる。
今年7月、警察庁は全国で摘発された少年たちの事例をまとめた冊子「犯罪実行者募集の実態~少年を『使い捨て』にする『闇バイト』の現実~」を作成した。全9ページ。警察庁のホームページで公開している。それによると、募集情報に接触するきっかけはSNS検索ワード「#闇バイト」「#裏バイト」「#高収入」「#学生可能」「#即金」などで自ら近づくケースと、先輩や友人から誘われるケースがあるという。 最初はX(旧ツイッター)やインスタグラムなど広く使われているSNSで接触し、応募が完了すると履歴が残らないなどの機能を有する匿名性の高い通信アプリ(テレグラムやシグナルなど)へ移行するよう指示される。さらに「バイトの登録情報として必要」などと言葉巧みに個人情報の提示を要求され、顔写真や身分証明書を犯行グループに渡してしまう。ようやく仕事の内容が伝えられ、犯罪だと分かって「やめたい」と申し出ても、その個人情報が悪用され「逃げたらどうなるか分かっているんだろうな」と脅迫される。道内の大学生に聞いてみた。藤女子大4年の学生(21)は「Xで検索すると普通に(闇バイトの)案件が出てくる。お金がなくて困っている学生はいて、簡単に高収入が得られるバイトに引かれる気持ちは分かる。学費の高さや物価高騰による生活苦は別の問題だが、無関係ではない気がする」。小樽商科大4年の男子(22)は「犯罪に巻き込まれないようにするには親とコミュニケーションを取るのが一番だと思う。周囲に相談せず、ひとりで悩みを抱え込むのは危険」と話す。
道警生活安全企画課は「闇バイトの募集に応じることは犯罪者になること。やめたいと言っても脅されて結局逮捕されるまで犯罪を繰り返すことになる。もし闇バイトをしなければならない事情があるなら、すぐに相談を」と呼びかけている。警察相談専用電話は「#9110」。(岩内江平、長谷川賢)合法か違法か微妙な「グレーバイト」という言葉もある。取材の中で「友達の友達が(交際の見返りに金銭を受け取る)パパ活やってる」「(うその口コミ投稿する)サクラレビューをしたことがある」といった声を聞いた。9月末まで長期の夏休み中、バイトに励む学生は多いと思う。くれぐれも気を付けて。(長)