見どころ5倍 知らないと絶対損する「近代五種」 : 東京オリンピック・パラリンピック : オリンピック・パラリンピック

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見どころ5倍 知らないと絶対損する「近代五種」 : 東京オリンピック・パラリンピック : オリンピック・パラリンピック
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見どころ5倍 知らないと絶対損する「近代五種」 五輪

ギリシャ時代の古代オリンピックにも、幅跳び、やり投げ、短距離走、円盤投げ、レスリングによる五種競技があった。選手は異なる5種類の競技で戦い、総合力を競った。近代オリンピックでは、創設者のクーベルタン男爵がフェンシング、水泳、障害馬術、射撃、ランニングからなる近代五種を提唱し、1912年のストックホルム大会で正式種目に仲間入りした。現在、射撃とランニングは「レーザーラン」としてまとめて行っている。 クーベルタン男爵がこの5種を選んだのは、ナポレオン戦争の故事にヒントを得たからという説がある。馬に乗った伝令兵が剣と銃で敵兵を倒し、泳いで、走ってナポレオンに情報を伝えたことを競技化したという。オリンピック精神を体現した「オリンピックの歴史」そのものだと言われることもある。 日本は1960年ローマ大会から1992年バルセロナ大会まで選手を派遣した。その後、出場できなかった時期を挟み、2008年北京大会から再び選手を派遣している。日本勢最高順位は2016年リオ大会の朝長なつ美選手(警視庁)の12位にとどまる。5種類もの競技を一つの会場で執り行うのは難しい。今大会の場合、水泳とフェンシングは栃木県体育館のプールとアリーナで、障害馬術は県央南部の壬生町にある乗馬クラブで、レーザーランは宇都宮市北部の河内総合運動公園で行われた。JR宇都宮駅を起点にすると、それぞれ電車やバスを乗り継いで30分前後の距離だが、選手たちは基本的に自力で移動する。競技を一つ終えると、すぐに着替えて次の会場へ転戦する。観客も同じで、選手の後を追ってぞろぞろと次の会場に移動する。慌ただしいと言えば慌ただしいが、ほかの競技にない趣と受け取ろう。 女子の最初の種目は水泳だ。韓国からの招待選手5人を含めた21人が、25メートルプールを4往復する200メートル自由形に挑んだ。プールサイドでは大音量で歌謡曲が流れていたが、平日の午前8時半ということもあって、一般の観客はほぼゼロ。視察に訪れた福田富一知事もパイプ椅子に座って静かに見守った。 一発目の種目ということで空気が張りつめる中、ともに自衛隊体育学校の内田美咲選手と高橋瑠佳選手が2分8秒62の同タイムでゴールして1位に。2人とも水泳が得意種目で、女子のエース、朝長選手を押さえての好発進となった。 タイムは得点に換算される。2分30秒を基準点の250点とし、プラスマイナス1秒ごとに2点を加減する方式だ。基準より21秒38速かった内田選手と高橋選手は43点が加算されて293点を獲得した。この得点は、続くフェンシングや障害馬術の得点と合算し、最後に行うレーザーランの出走順と、トップとの時間差(ハンディキャップ)になる。そしてレーザーランのゴール順がそのまま最終順位となる。それにしても、選手は持ち物が多い。フェンシングだけで剣2、3本、マスク、グローブ、プロテクター、ジャケット、シューズ。これに馬術やレーザーピストルの用具も加えて国内外を遠征しているのだ。フェンシングは「エペ」1本勝負の総当たり戦。エペは相手の全身のどこを突いてもよい。突くと、剣先の電気スイッチが作動して信号が流れ、得点板のランプがともる。試合時間は1分間。早々に決着が付くこともあるが、女子でも招待選手を含め21人いるため、各自20試合を行う過酷な競技だ。フェンシングのトップ成績は才藤歩夢選手(マイナビ)の18勝2敗。14勝6敗で2位だった朝長選手を大きく引き離した。 フェンシングの得点計算の方法は、はっきり言ってややこしい。まず、勝率70%の人を基準点250点とする。そして1勝(敗)ごとに、あらかじめ決められた得点を加減する。1勝(敗)ごとの加減点は参加人数に応じて決まっている。今大会の場合、女子(21人参加)は9点、男子(28人参加)は8点だった。この方式だと、参加人数が多くても少なくても、トップ選手の得点はおおよそ300点強となり、ほかの種目の最高点とだいたい横並びとなる。全敗しても100点ほどは獲得できる計算だ。 結果的に、女子は朝長選手がちょうど勝率70%で250点。朝長選手を勝ち数で4つ上回った才藤選手は286点で、36点の大差が付いた。ちなみに男子は、1位が23勝4敗(282点)で、2位は21勝6敗(266点)だった。乗馬クラブに到着すると、選手たちはすでに金ボタンのついたジャケット、ブーツを着て、手にはムチというりりしい姿に身を包み、競技の準備をしていた。障害馬術の最大の特徴は、試合開始1時間前に抽選で馬があてがわれることだろう。馬術競技というと、愛馬と呼吸を合わせて挑むイメージがあったが、近代五種の障害馬術は、開催地の乗馬クラブなどから借りた馬(貸与馬)を使う。抽選結果の発表を聞いた女子選手たちが「○○選手が△△(馬の名前)を引き当てるなんて運がいいね」と話すのが聞こえた。おそらく前日に障害馬術を済ませた男子から貸与馬に乗った感想を聞いていて、馬の名前と評判が頭に入っているのだろう。情報戦はすでに始まっているようだ。 馬が決まると、選手は馬主からその馬の性格や特性を聞く。馬主としても、いい走りで高得点を出して帰ってきてもらいたいという心理が働くという。遠目でも、熱心に選手に説明しているように見えた。馬場に入る直前のこの時間は、選手にとって、とても貴重に違いない。 試合では規定時間内に12個の障害を飛ぶ。点数は300点満点からの減点方式で、馬が障害を飛ばなかったり、飛んでもバーを落としたりしたら減点となる。この日は朝長選手の馬がいくつかの障害を拒否し、233点に沈んだ。逆に、最終出走した才藤選手はノーミスでスムーズな走りを見せ、女子で唯一の300点満点をたたき出した。上位選手の順位変動をまとめたのが下の表だ。競技が進むにつれて順位が激しく変動するのが分かる。内田選手は得意の水泳で1位発進したが、フェンシングで足を引っ張られてしまった。才藤選手は苦手の水泳で大きく出遅れたが、得意のフェンシングと障害馬術で一気に挽回した。翌日のレーザーランは、ランニングが苦手と公言する才藤選手が初日の貯金を守りきって先頭でゴールできるかどうかが、最大の見どころになった。 ちなみに日本では、近代五種の選手は競泳や陸上競技からの転向組が多い。近代五種の指導者からスカウトされてフェンシングや馬術を習得するパターンだ。そのため、水泳やランはあまり実力差が出ない。逆に、直接対決で勝敗を分けるフェンシングは、実力差がそのまま点差になって表れるだけに、多くの選手が課題としている。レーザーランは、ピストル型のレーザー銃で10メートル先の5個の的に命中させる射撃と、800メートル走を交互に4回(4セット)繰り返す。「動」と「静」の限界に挑むところが見どころだ。経験者によると、射撃台に立ってすぐ心拍数が下がるわけはなく、狙い定めた銃の照準は円を描くばかり。的に当てるのは至難の業という。5個の的をクリアできないまま、持ち時間の50秒間を使い切る選手もいる。 ところで、800メートル走は1周400メートルのトラックを単純に2周するものと思っていたが、折り返し地点を2か所設けて、「C」の字の形のコースを往復するように設計されていた。選手の動線が交わらないようにするための知恵である。 午前10時半。女子の1番手、才藤選手がスタートし、射撃台に立った。寒さと緊張のためか、なかなか的に当たらず、11発目でクリア。約40秒おくれて出走した高橋選手ら後続選手に差を縮められた。中でも5番手で出走した桑名知可子選手(自衛隊)が激しく追い上げたが、才藤選手は最後まで1位を守りきってゴールした。 800メートル走は陸上競技で最も過酷という話もある。合間に射撃を挟みながら4回繰り返し、3.2キロを走るのは想像を絶する。ゴールした選手は男子も女子も地面に倒れ込むと、しばらく立ち上がれないほどだった。 5競技で万能を求められ、駆け引きや運も勝負を分ける近代五種。世界的に見ると競技としての歴史はあるが、国内では競技人口を増やすための裾野拡大や組織作りも途に就いたばかり。その一歩として、試合の途中成績が観客に分かるように掲示してもらえると、もっと競技を楽しめるかもしれないと思った。.

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