古来日本では、「2月は逃げる月」と言ったそうだが、そんな今月、逃げることをテーマにした面白そうな1冊と巡り会った。その名もずばり、「逃亡の書…… → 済州島からイエメン、ウクライナまで 平和への希求を描く異色のルポ「逃亡の書」 #ForbesJAPAN
実は不勉強にも前川仁之(さねゆき)という著者の名に接するのは初めてだが、開高健ノンフィクション賞にノミネートされたこともある書き手らしく、前著は「韓国『反日街道』をゆく:自転車紀行1500キロ」と題した大韓民国をチャリで走破した記録だそうだ。そこでさっそくページを開くと、2018年の初夏、著者が済州島(チェジュド)に向かうところから始まる。済州島といえば、映画「楽園の夜」(2019年)やドラマ「私たちのブルース」(2022年)の舞台となった韓国のハワイと呼ばれる世界遺産の島だが、著者の目的は観光ではない。ルポルタージュの取材である。当時、朝鮮半島南西の海に浮かぶこの楽園の島は、にわかに巻き起こった難民問題で揺れていた。事の発端は、さまざまな条件が重なり、世界最悪の人道危機とも言われた母国の内戦を逃れたイエメン人たちが、マレーシアを経由して、多数やって来たことだった。ほどなく生じた地元民との間の摩擦はみるみるエスカレートし、韓国政府は対応に苦慮していた。
旅装を解く間も惜しみ、まずは難民申請や審査を管轄する出入国・外国人庁へ空港から直行した後、ロールプレイング・ゲームで経験値をあげるように、出会ったイエメン人と思しき人々に次々話しかけていく。それと並行し、韓国側の関係者たちとも積極的に接触を重ね、綿密な情報収集に怠りはない。 「難民」を辞書で引くと「天災・戦禍などによって、やむをえず住んでいる地を離れた人々」(デジタル大辞泉)とある。イエメンからの難民は、2014年のフーシ派(共和制の廃止や反米・反イスラエルを主張するイスラム諸分派のひとつ)による首都占拠により、周辺諸国を巻き込み激化する武力抗争から生じたものだが、著者は忽ちのうちに、地元の過剰な反応を日本人の排他的な一面に通じると看破する。
日本 最新ニュース, 日本 見出し
Similar News:他のニュース ソースから収集した、これに似たニュース記事を読むこともできます。
済州島からイエメン、ウクライナまで 平和への希求を描く異色のルポ「逃亡の書」 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)古来日本では、「2月は逃げる月」と言ったそうだが、そんな今月、逃げることをテーマにした面白そうな1冊と巡り会った。その名もずばり、「逃亡の書」(小学館刊)というノンフィクションだ。実は不勉強にも前川仁之(さねゆき)という著者の名に接するのは...
続きを読む »
42年前のソビエト製ロケット、制御不能で地球に落下 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)42年余り前に打ち上げられた1.4トンのロケットが、ついに地球に帰還した。正確に言うと、20日に大気圏に突入して炎上し、その一部が地上に落下したとみられる。ソビエトのボストーク2Mロケットは、1980年に偵察衛星の打ち上げに使用された後、地...
続きを読む »
SNSにあふれる「逆共感」、ユーザー体験を台無しに | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)ソーシャルメディアは、使い方次第では人の精神をすり減らしてしまう。もちろん大切なのは、そうならないように対策を講じることだ。この10年間でTwitter(ツイッター)などのアプリが登場したことで、誰もが自分の本音を投稿でき、アイデアや視点を...
続きを読む »
事業の多角化で社員がチャレンジできる環境をつくる。新進ITコンサルファームCEOが描く未来 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)ZEINの採用情報をみる「創業して6年目ですが、最初の5年間はあえて急成長を望みませんでした」そう語るのは、ベンチャー系ITコンサルファーム…… → 事業の多角化で社員がチャレンジできる環境をつくる。新進ITコンサルファームCEOが描く未来 #ForbesJAPAN
続きを読む »
米国でESG投資に逆風、共和党は「エリート主義」の排除を要請 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)共和党が率いる多くの州が、金融機関が州の資金をESG投資に注ぐことを阻止しようとしている。ESG投資とは、環境・社会・企業統治の向上を目指す投資で、投資判断に非財務的要素を取り入れ、銃や化石燃料企業への投資の禁止などをポリシーとしている。こ...
続きを読む »