品格のあるエレガンスに、圧巻のボディライン。50歳という節目の年齢を迎えてもなおいっそう輝きを増し、周囲を魅了する松嶋菜々子を、『VOGUE JAPAN』2024年6月号で特別に撮り下ろし。初となるロングインタビューでは、時代を牽引してきた彼女の本質的な美の秘密に迫った。
松嶋菜々子、圧巻の美。彼女がいつまでもエイジレスでみずみずしい理由 長身にすらりと伸びた四肢、その場に立つだけで圧倒的な華を感じさせる容姿。さらに、そこだけに寄りかからないプロフェッショナルとしての姿勢も持ち合わせている。それでもなお、松嶋菜々子の美しさを語りつくしたとはいいがたい。だからこそきっと、彼女はいつだって一世を風靡する存在であったし、つねに周囲の憧れの的でありつづけてきた。...
松嶋菜々子、圧巻の美。彼女がいつまでもエイジレスでみずみずしい理由 長身にすらりと伸びた四肢、その場に立つだけで圧倒的な華を感じさせる容姿。さらに、そこだけに寄りかからないプロフェッショナルとしての姿勢も持ち合わせている。それでもなお、松嶋菜々子の美しさを語りつくしたとはいいがたい。だからこそきっと、彼女はいつだって一世を風靡する存在であったし、つねに周囲の憧れの的でありつづけてきた。 そういった世間一般の評価には、俳優として映画やドラマの役柄を演じたり数多くの広告に出演したりする以上に、妻として、母として──時の流れとともに女性ならではのさまざまな”顔”を持つようになってもなお、麗しく”変わらない”でいる事実に対する称賛も、少なからず含まれているのかもしれない。しかし”完璧な美女”や”正統派女優”のイメージをほしいままにしてきた印象を持たれがちな彼女だが、実はその限りではないことにお気づきだろうか。近年も、テレビCMで写真加工風のメイクに挑戦したり、ドラマの中で占いにハマる中年女性のキャラクターを演じたりして話題をさらったことが記憶に新しい。従来の印象を軽やかに一新する”意外”な姿を、頻繁に披露してくれているのだ。 「もともと好奇心旺盛で、さまざまなことを見聞きしたり、経験したりするのが好きなんです。今回のヴォーグジャパンでの撮影もそう。幸せそうにほほえむ”いつもの”姿ではなく、クールな表情を求められましたから。1カットにかける熱量やクオリティを追求する姿勢はすばらしく、またひとつ新しい経験をさせていただきました」 挑戦を拒まず、上手にアップデートを重ねていく。それは時に多大な労力を要することでもあるが、松嶋さんはむしろその機会を肯定的に捉えて向き合っているようだ。「私にお仕事のオファーをくださる、ドラマや広告といったコンテンツをつくっている立場にある方々は、つねにそういう新鮮な一面を引き出してくれようとしていると思うんです。それがうまくフィットして似合っていれば『意外だね』と楽しんでもらえるし、そうでなければ『ガラじゃない』と揶揄される。この仕事をしている以上、すべての人に好感を持ってもらうものづくりをするのはどうしても至難の業です。それで、あるときから”なぜ自分がこの役割を与えられたのか”を考え抜き、求められるものや言われたことをどれだけ自分のものにしながら期待に応えていけるか、というところに重点を置くようになりました」 名指しでオファーしてくれた期待に、応えたかったというだけ 16歳の頃にスカウトされ、モデルとしてデビュー。その後演技の才能を開花させ、数えきれないほどのドラマや映画に出演して国民的スターへ。それでも周囲に流されることはなく「10代の頃から、自分の中にはっきりとした軸を持ってやってきました」と語る。 「もともと背が高かったこともあり、かつて世間に広く受け入れられていたような”かわいい女の子”像からは遠く離れたところにいたし、女子校で男の人の目を気にすることもなく育ってきて。私のデビュー当初は今よりももっと、世の中がいわゆる”女らしさ”や”男らしさ”というステレオタイプにとらわれていた時代。でも私自身はそうした状況を一歩引いたところから捉え、仕事の一環と割り切って考えていたように思います。それよりも普通の10代の女の子だった私にとって、ほかの誰でもない自分の名前でお仕事のオファーをいただけることが、とてもうれしくすごいことでした。新しく声がかかることで自分の存在価値を実感できたし、『自分はこういうふうに仕事をして生きていくんだ』と、急に自分の人生が開けてみえたように感じたんです。そこから“人に求められる人になりたい。そのためには、仕事現場で周囲の人の期待に応えたい”と考えるようになっていきました」 プロとして求められることを機敏に察知し、その時々の課題をクリアしていく過程に大きなやりがいを見出した松嶋さん。それが、俳優として凝り固まったイメージにとらわれず、つねに新たな挑戦を重ねる姿勢の源となった。 それでは、年齢を重ねることによる変化とは、どのように向き合ってきたのだろう。「実は若い頃から、早く大人になりたかったんです。10代で芸能界へ入り、大人の世界に揉まれるようになったわけですが、年上の人たちとの付き合いがとても楽しくて。“なんて居心地がよいのだろう”って思っていました。それがずっと続き、40代の頃でさえも、気分はもう50歳くらいのつもりでいましたね（笑）。だから、年齢や体重といった数字にこだわりがないんですよ。最も大事なのは、人としてのリスペクトかなあと。年齢もセクシュアリティも関係なく、互いに尊重して認め合うことが大切。夫とも『一緒に年を取って体をいたわり合いましょうね』なんて話しています」 それでも、妊娠や出産を経て体調の変化を意識せざるを得ない時期はあった。「自分の中では“時の流れとともにシミやシワが増えて当然“と考えているし、気にしてはいなかったのですが、俳優という職業上そうはいかない場面もあって。特に産後は“見た目を変えない努力をしなければならない“という世の中の圧力を感じることがあり、自分の内面や考え方とは少し食い違っているように思っていました。けれど、容姿を若いまま保つことだけに執着する必要はなく、上手に変化していけば周りからは『変わらないね』と言ってもらえるのだなと気づいて。美しさや若さにこだわるのは素敵なことですが、けっしてそれだけがすべてではないですし、行きすぎると危険だと捉えています」 それと同時に、美容やおしゃれをポジティブに楽しむことが持つパワーにも気づいたそう。「年齢による変化に立ち向かってチャレンジしていこうと考えるだけで、実はエイジングケアにつながるという側面もありますよね。その人しだいで、健康的にケアすることはできると考えています。ファッションも同じ。自分のために着たい服を着ているときはすごくハッピーな気持ちになれるけれど、その一方で、たとえ同じ服を身につけていたとしても、人から見られるためだけにするおしゃれはちょっと不健康なのかなと。同じ物事も考え方ひとつで、その人にとって“ラグジュアリー”になるか、そうでないかが分かれるのだと思います」 松嶋菜々子が考える、真の美しさとラグジュアリーとは【松嶋菜々子、エイジレスな洗練 vol. 2】はこちらから。 Photos: Jun Yasui Makeup: Coco Hair: Tetsuya Yamakata Styling: Sumire Hayakawa Interview & Text: Misaki Yamashita Editor: Kyoko Muramatsu ※『VOGUE JAPAN』2024年5月号転載記事
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