日本が長年得意としてきた材料科学、その研究開発の現場がAIやデータサイエンスの導入によって大きく変わりつつあります。旭化成や東レなどの材料メーカーをはじめ、産業界でも注目が集まる｢MI｣とは何なのでしょうか？
｢開発時間が短くなると当然コストはそれに比例して少なくなります。それ以外にも、市場参入のチャンスが全く変わってきます。1年後なら製品に採用できないけど、今なら間に合う。そういうことが起こってきています｣（青柳さん）処理可能な量が2倍以上青柳さんによると、こうして得られた｢最適条件｣は、熟練の研究者も想定外の結果でした。
｢研究者の経験や直感にはどうしても偏りがあります。今回の条件は、現場で何年も経験を積んだ開発者からは出にくかった発想でした。ただ、MIが出した条件を眺めてみると、『確かにそれもありだよね。なるほど！』となるんです｣この実験のプロセス条件は20種以上ありました。仮に全てのプロセスで変更できる条件が2パターンしかなかったとしても、全条件の組み合わせは100万通りを超えてしまいます。これを全て確かめていては、途方もありません。CrowdChem代表の池端久貴さん。元旭化成でデータサイエンティストとして勤務していたが、統一的なプラットフォームの構築を目指し独立。画面に映っているのが、CrowdChemが開発するモデルのイメージ。｢総合化学メーカーの方から話を聞いても、一定の予測をもとに研究することが当たり前になりつつあると感じます。（MIを使うという）共通言語化ができているんじゃないでしょうか。ただ、大企業がMIを製品開発に活用しようとする場合、個別プロジェクトについていわゆる社内コンサル的に進めるような話になることが多いんです｣
こう話すのは、2022年に誕生したばかりでありながら、大手化学メーカーや大手自動車メーカーら複数社と共同研究プロジェクトを進めているMI分野のスタートアップ・CrowdChemで代表を務める、池端久貴さんです。
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