新年度に入ってからの日経平均株価は上値が重い。年明けから3月まで一気に駆け上がった勢いは影を潜め、なかなか3万9000円台を回復できずにいる。4月18日の当コラムでは、その理由として、日本株の投資環境が「内憂外患」だからだと述べた。それから1カ月がたつ。「内憂外患」はどう変わったか。状況をアップデートしよう。まず「外患」として挙げた米国市場だが、あまり大きな変化はない。この1カ月、長期金利は一
まず「外患」として挙げた米国市場だが、あまり大きな変化はない。この1カ月、長期金利は一時4.7%を超える上昇を見せたものの、足元では4.5%を下回る水準に落ち着いている。一方、株価の方は堅調に推移して上昇した。結果として株価指数の予想益利回りから長期金利を引いた「イールドスプレッド」は0.3%台に小幅に縮小したが、株価の割高感は残ったままだ。ただし、米株市場の「中身」には変化が表れている。4月には、金利上昇局面で成長株主体のナスダック総合株価指数のパフォーマンスがダウ工業株30種平均よりよいのは不自然だと指摘したが、その状況はこの1カ月で修正が進んだ。ダウ平均が8連騰など大きく上昇する一方で、ナスダックのリターンは劣後した。
そうは言っても、ナスダックは再び最高値を更新した。だが、巨大テック銘柄だけがけん引している「一極集中」の状況は改善された。過去1カ月のMAG7のリターンはナスダックと同率で、ダウ平均を下回った。さらにラッセル2000のような小型株が多く含まれる株価指数のリターンもナスダックを上回った。米株市場の中で物色対象の広がりが見られたということだが、これは前述の巨大テック銘柄への「一極集中」が解消されたという点では健全と捉えられるかもしれない。 しかし、株式市場で投資対象銘柄の選好が移りゆく循環物色が進み、小型株まで買われるのは、上昇の最終局面であることが多い。ダウ平均などの指数は再び最高値に迫っているが、上昇相場もいったんピークに近いのかもしれない。次に「内憂」を見てみよう。4月時点で目に付いたのは、相次ぐ値上げに消費者がついて来られず「値上げ疲れ」を起こしているという点であった。そのため企業の値上げにも一巡感が出てきて、一部では値下げの動きまで現れていた。日本経済を長年むしばんできたデフレ脱却が現実となりつつあるのは喜ばしいが、今度はインフレが家計・企業の重荷になってきた。そこに記録的な円安が拍車をかけている。
内閣府が発表した4月の景気ウオッチャー調査(街角景気)では、現状判断指数(DI、季節調整値)は前月比2.4ポイント低下(悪化)の47.4だった。低下は2カ月連続。基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」という表現に下方修正された。円安による物価上昇への懸念が根強い。円安に関するコメントは300超と前回調査の3倍に増えた。 こうした景況感の悪化は企業の決算発表にも反映されている。着地した前期、つまり2024年3月期の業績は好調だった。3期連続の最高益で営業利益は2割も増えた。しかし、今期25年3月期は、売上高も利益もざっくり言って横ばいの見通しである。無論、期初は企業側見通しが慎重なものになりやすいという季節特有の要因はあるだろう。しかし、それを割り引いても迫力のない業績見通しである。前期までの好業績をけん引した値上げを見込みづらい一方で、物価高や円安、加えて人件費増などによるコスト増が利益を圧迫している部分も多分にあるのだろう。
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