【ロンドン時事】欧州に住む日本人に30年以上にわたり親しまれてきた日本語テレビ放送が、10月末でその歴史に幕を下ろす。インターネットがない時代には、欧州に住む日本企業の駐在員や永住者にとって、日本の番組を見ることができる貴重なメディアだっただけに、「寂しくなる」などと放送終了を惜しむ声が相次いでいる。 放送を終えるのは、ロンドンに本社を置くNHKコスモメディアヨーロッパが運営するJSTV。1990年に試験放送を開始し、92年1月から有料放送に移行した。...
【ロンドン時事】欧州に住む日本人に30年以上にわたり親しまれてきた日本語テレビ放送が、10月末でその歴史に幕を下ろす。インターネットがない時代には、欧州に住む日本企業の駐在員や永住者にとって、日本の番組を見ることができる貴重なメディアだっただけに、「寂しくなる」などと放送終了を惜しむ声が相次いでいる。JSTVの「売り」は、日本の番組をリアルタイムで見られること。当時としては画期的で、特に大相撲中継は好評だった。NHKの関連会社と共に株主となっている民放のドラマやバラエティー、アニメが視聴できることもセールスポイントだった。
88年に夫らと家族で英国に渡った日本語教師の葛西順子さん(64)=熊本市出身=は、放送初日からJSTVを見ている一人。それまでは実家から届くビデオテープが日本の番組に触れる唯一の手段で、JSTVは「子供の日本語習得にも威力を発揮した」と語る。家族旅行の際に「連続ドラマの最終回を見たくて、JSTVが映るホテルにわざわざ泊まったこともある」と懐かしそうに笑った。JSTVは遠く離れた日本の災害状況を確認する手段にもなっていた。16年4月に発生した故郷熊本の地震の際、「熊本城の瓦が音を立てて崩れていく映像を目の当たりにして、ショックで動けなかった」と話す葛西さん。「JSTVがなくなるのは困る」と顔を曇らせた。
今年5月に放送終了が発表されると、JSTVには「残念」「これまでありがとう」といった声が寄せられているという。欧州各国ではJSTVに代わり、NHKの日本語放送サービスを視聴できるよう整備が進められている。
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