近年、日本人作家の英語圏における評価はめざましい。多和田葉子が2018年に「献灯使」で、昨年は柳美里が「JR上野駅公園口」で全米図書賞の翻訳文学部門を受賞、村田沙耶香の芥川賞受賞作「コンビニ人間」は米国で10万部のベストセラーとなった。日本の現代文学が海を越えて注目されるのはなぜか。辛島デイヴィッドがこのほど刊行した『文芸ピープル』(講談社)は翻訳家や英語圏の編集者を取材して、その背景を探るルポ
自身も作家・翻訳家で、これまで金原ひとみ「蛇にピアス」や松浦寿輝「巴」などを訳してきた。かつて日本文学の翻訳というと、アカデミアのなかで研究の一環として行われることが多かったが、翻訳を取り巻く状況は「この数年で顕著に変わった」という。理由のひとつは「英語圏の出版業界が外、とりわけアジアに目を向けている」こと。同時代の日本文学への高い関心が、文芸翻訳家たちに出版の道をひらいた。とりわけ女性作家の作品が注目されている。「普遍的なテーマを扱いながら、独自のスタイルやヴォイス(声)を持っている。言語を超えて読まれる力がもともとあり、ようやく届ける土台ができた」
英語圏の読者は翻訳文学に、英語で書かれたものにはない魅力を求めている。「風変わりな」というキャッチフレーズが心に響くようで、ヒットした作品と似たものを求める傾向も出版業界にはある。それを打破しさまざまな作品を紹介していくには、やはり翻訳家の力が重要だと話す。「翻訳家は『風変わり』だから訳しているわけでなく、ふたつの文化のはざまに身を置き、完成度の高い作品だと考えて翻訳している。マーケットに任せるのではなく、違うものにチャレンジするモチベーションを持っている」。次世代の訳者にバトンをつなぐ試みにも期待を寄せている。
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