総務省の発表によると、サイバー空間は若年層から高齢者まで、誰もが日常的に利用する「公共空間」へと変化している。この変化に対応し、国民全体が安全に利用できるよう「Cybersecurity for All=誰も取り残さないサイバーセキュリティ」という基本方針を掲げる日本政府は、DX推進とサイバーセキュリティの同時推進、サイバー空間全体を俯瞰した安全・安心の確保、安全保障の観点からの取り組み強化という3つの柱で具体的な取り組みを進めている。
サイバー空間 の“ 公共空間 化”がよりいっそう進み、若年層から高齢者まで、当たり前のように サイバー空間 を使うようになっている」――。総務省の山内氏は基調講演の冒頭、 サイバー空間 を取り巻く近年の環境変化についてこう切り出した。 実際に、各種の調査統計によると、国内のスマートフォン保有率は70歳代でも9割を超え、子どもや高齢者のインターネット利用は急拡大している。また企業でのテレワーク実施率、オンライン行政手続きの利用率も高まった。つまり現在の サイバー空間 は、誰もが日常的に使う“ 公共空間 ”になったというわけだ。こうした 公共空間 化に対応するべく、日本政府では「 サイバーセキュリティ 戦略」(2021年9月閣議決定)において、「Cybersecurity for All=誰も取り残さない サイバーセキュリティ 」という基本方針を掲げている。国民全体が参画する サイバー空間 を「自由、公正かつ安全な 公共空間 」として守っていく方針だ。
取り組みの核となっているのは、DX推進による産業の強化とセキュリティをバランス良く推進していく「DXとサイバーセキュリティの同時推進」、一部のサービス停止(たとえば大規模通信障害など)が他のサービスの運用にも大きく影響する実態をふまえた「サイバー空間全体を俯瞰した安全・安心の確保」、そして「安全保障の観点からの取り組み強化」という3つの柱だと、山内氏は説明する。 こうした方針に基づく近年の具体的な取り組みも紹介された。重要インフラ(全15分野)のサービス維持を目的に、所管省庁と関係機関、関係民間企業の間の協力体制強化などを図る「行動計画」の策定、さまざまな政府機関が利用するクラウドサービスの統一的なセキュリティ基準を明確化した「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」の策定、事業活動の中でAI/AIシステムに関係するすべての人(開発者、提供者、利用者)を対象とする指針を示す「AI事業者ガイドライン」、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を改組してサイバー安全保障分野の新組織を設置するなどの「サイバー安全保障分野での対応能力の向上」などだ。山内氏は、こうした環境変化や政府/総務省の方向性をふまえたうえで、民間企業を中心とする聴講者に「DXの推進と並行して、サイバー攻撃への対応としてやっておきたいこと」を、自身の私見も交えながら具体的に呼びかけた。 山内氏はまず「DXを通じて保有する情報資産や利用するサービスが変化していくならば、それに応じてセキュリティ対策を変えることも考えなければならない」と指摘する。講じるべき対策、整備すべき体制は、それぞれの企業におけるデジタル化の進捗度合い、保有する情報資産、利用するサービス/アプリケーションに依存するものだからだ。 次に、企業の職務階層別に「知るべき事、やるべき事」を説明した。たとえば、経営層はセキュリティ対策の詳細まで知っておく必要はないが、DXの計画がフロントオフィス/バックオフィスにどう影響を与えるのか、その際のサイバーリスクはどういったものが考えられるかを知っておいてほしいという。そのほかの職務でも、それぞれの職務に応じた「知るべき事、やるべき事」を把握しておくことが大切だ。 それをふだんから徹底することで、BCP(事業継続計画)でもそれぞれの関係者が「やるべき事」が明確になり、縦割りではない形のアクションが実現する。演習や訓練を定期的に実施して、有事の「動き」を確認しておくことも不可欠だ。
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