新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は人間の脳に影響を及ぼすことが知られており、回復後も集中力や認知機能が低下するケースがあると報告されているほか、重度のCOVID-19は20年分の老化に匹敵する認知的影響をもたらすとの研究結果もあります。アメリカのトーマス・ジェファーソン大学やイースト・カロライナ大学の研究チームが発表した研究結果では、「COVID-19がパーキンソン症候群の発症リスクを増加させる可能性がある」と報告されています。
に感染することがパーキンソン症候群のリスクを上げるのかどうかを調べるため、SARS-CoV-2が細胞に侵入する際に使われるタンパク質であるヒトACE2受容体を発現するように遺伝子組み換えしたマウスを、SARS-COV-2に感染させる実験を行いました。今回の実験では、人間に換算すると中度のCOVID-19を引き起こす量のSARS-CoV-2が投与され、感染したマウスの80%が生き残ったとのこと。
生き残ったマウスは2つのグループに分けられ、回復から38日後に一方には通常はパーキンソン症候群を引き起こさない低用量のMPTPが投与され、対照群には生理食塩水が投与されました。MPTPまたは生理食塩水の投与から2週間後、研究チームはマウスの脳を解剖して、ドーパミンを合成するニューロンに変化があるかどうか調べました。 その結果、COVID-19になっただけではニューロンに影響が及ばなかったものの、回復後にMPTPを投与されたマウスではパーキンソン症候群にみられるニューロン喪失パターンが確認されました。このパターンは過去にインフルエンザで確認されたものと類似しており、COVID-19はインフルエンザと同様にパーキンソン症候群の発症リスクを高める可能性があると示唆されています。
論文の筆頭著者であるトーマス・ジェファーソン大学のRichard Smeyne博士は、ウイルス自体がニューロンを殺すのではなく、毒素や細菌といったものの影響を受けやすくする可能性があると指摘。インフルエンザやCOVID-19は炎症を誘発する化学物質が大量放出される