民間シンクタンクのアジア太平洋研究所(APIR)が発刊した令和5年版「関西経済白書」は、関西を中心に世界・日本経済の現状を詳しく「分析」する一方、「政策提言」は...
民間シンクタンクのアジア太平洋研究所(APIR)が発刊した令和5年版「関西経済白書」は、関西を中心に世界・日本経済の現状を詳しく「分析」する一方、「政策提言」は乏しく、専門家向けの小難しい〝学術書〟のようだ。各章の筆者の私見も一部にとどまり、利害関係が複雑なテーマは旬であってもあえて外したように感じる。だが、事業の柱である白書を多くの人に読んでもらわなければ、存在価値が問われないだろうか。前半の世界経済や日本企業の課題を掘り下げた章では、日米など14カ国が参加する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合で、政府や労働団体、企業代表による「労働者の権利」を推進する委員会を作る合意があったことに言及。
編集委員の後藤健太・関西大経済学部教授は「国内では企業の人権尊重は要請にとどまるため、メディアはあまり注目していないが、欧州を筆頭に義務化が進んでいる」と指摘。その上で、長期的で安定的な企業間関係や雇用を重視してきた日本企業の人権尊重は多くの場合、強制力を伴わない〝暗黙知〟のため、それを発掘すれば、価値観が多様で義務化に難色を示しそうなアジア各国にも知見を示せる−との持論を掲載した。かなり踏み込んだ私見だ。一方、後半は「関西経済反転に向けての正念場」と大上段の見出しを付けたにもかかわらず、各章は現状分析が大半だ。また、白書の冒頭あいさつで、APIRの宮原秀夫所長は、大阪府市が計画するカジノを含む統合型リゾート施設(IR)「大阪IR」について「多くの集客施設を一体的に整備することで多くの集客が見込め、今後の大阪・関西経済の起爆剤」と強調したが、大阪IRを取り上げた章はなかった。編集委員長の稲田義久研究統括は「開業が先で、具体的なコンテンツや投資額を見極めていた」と釈明したが、在阪企業の賛否が割れているため、取り上げにくかったのかもしれない。
APIRは約200社・団体の会費で運営されており、特定の企業グループの影響を受けない全国的にも珍しい「中立的なシンクタンク」というのが自慢だが、忖度(そんたく)しなければならない企業が多すぎて、ズバッとした提言・私見を打ち出しにくいのではないか。実際、最近の白書は面白みに欠けるとの声も上がる。4年版は約400部を書店に出荷したのみだった。 昭和31年度の経済白書に登場した「もはや『戦後』ではない」というフレーズは今も語り継がれる名言だ。関西白書にもそんなワクワク感を求めたい。多くの人に読まれるユニークで独自色のある白書を世に送り出せば、APIRの存在価値も高まるはずだ。(経済部長 藤原章裕)
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