低軌道衛星から地上へのファイル伝送を事業化、宇宙クラウドの時代へ
国際宇宙ステーション(ISS)での実験や活動のデータは、直接地上に送られるのではなく、NASAが展開する追跡データ中継衛星網「TDRS」を介して送られてきます。今後、地球低軌道での商業活動が活発化してくると、こうした中継衛星の必要性が増し、各企業が事業化に乗り出すのは必然です。そこで、ISS日本実験棟「きぼう」の運用を行う有人宇宙システム(JAMSS)は、ISSからの自律的なデータ転送の実験を行い成功させました。
地球低軌道を周回する人工衛星と通信するには、地上の各地に配置した基地局のネットワーク「STDN」が使われてきましたが、静止軌道上に中継衛星を配置してネットワークを組むほうが安上がりだと考えたNASAは、TDRSを整備してきました。今後、宇宙ビジネスが発展し、低軌道から地球へのデータ転送量が爆発的に増えたとき、TDRSだけに頼ることはできず、複数のダウンリンクが必要になります。 それには、宇宙から大容量のファイルを丸ごと送るファイルダンプ技術の確立が必要です。JAMSSが実験を行った「自律的ファイルダンプシステム」は、大容量データをユーザーの希望に応じて転送するもので、そのときだけ通信帯域を割り当てるなどしてコストの削減をはかります。また、転送中にデータが欠損した場合に自動修復する機能も併せ持ちます。
JAMSSは、ISSで使用されているAmazonのデータ転送装置AWS Snowconeに自律的ファイルダンプシステムに展開し、これをファイルサーバーに見立て、合計約1ギガバイトのファイルを3ユーザー分作り、地上の端末に順次伝送しました。その結果、欠損の修復を経て、予定どおりに与えられた帯域で送信されたすべてのファイルが、地上端末に再現されました。 今後は、この技術の実証を進めて宇宙利用への展開を目指すとしています。また、軌道上のファイルサーバーでデータ処理を行い通信効率を高めるなどの可能性も考えられるということ。こうした技術を基盤に、地上でも宇宙でも使える宇宙クラウドが整備されれば、宇宙はますます身近なものになるでしょう。
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