巨人前監督の原辰徳氏(65)が、スポーツ報知に特別寄稿した。巨人時代には通算17年間、指揮を執り球団史上最多となる1291勝、9度のリーグV、3度の日本一に導いた名将が、見事に初陣を飾った阿部監督へ
のエールをつづった。“慎之助の野球”で完勝したことの意味は大きい。春先から守備力と自己犠牲を選手に求めていったというが、それが彼のカラー。5回に相手のミスに乗じて、自己犠牲心と足を絡めた目指す形で先手を奪い、期待して抜てきした勝利の方程式が盤石な投球で守り切る。そこに佐々木、西舘といった楽しみなルーキーがきっちり役割をこなし、いいプロの第一歩を踏み出したことも加わる。振り返ってみれば、3回の梶谷の「これぞプロ」というプレーを潮目に点差以上のワンサイドゲームとなるのだから、27個のアウトをきっちり奪うことがいかに重要かということも体感したことだろう。
昨季限りで若きリーダー・慎之助に指揮を託した。慎之助とは監督と選手、1軍監督と2軍監督、監督とヘッドコーチと立場はさまざまだったが、長く一緒にいた。当然、多くを話したが、その時間をどう本人が受け止めているか。監督となって初めて見えてくるものがあり、その状況の中で思い出してくるでしょう。 本来、監督というのは目立つものではない。チームの舵(かじ)を正しく取る。その一点のみ。背伸びする必要はない。一生懸命かかとを上げたって、10センチ程度のもので、それ以上に疲れるよ。地に足をつけて戦うことが重要になる。 野村克也さんもよくおっしゃっていたが、「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」と。まさにその通りで、勝っても負けても検証して、必要ならば反省して、対策と希望を持って次の試合に挑む。監督としてのシーズンは想像している以上に長い。日々、新しい気持ちで、今日より明日、明日よりあさってという形でチームを動かしてほしい。
今季のチームはベテラン、中堅、若手が融合して、バランスの取れたチームになっている。ベテランは守りに入ろうと思わず、キャリアハイの成績を目指してほしい。中堅はレギュラーを脅かす、奪ってやる、そういった自立を期待したい。若手は失敗を恐れず、勇気あるプレーを徹底してほしい。誰かに依存することのない突出した個の力を束ねた時、これ以上ない強さを発揮する。(巨人軍オーナー付特別顧問)