京都にある世界文化遺産の賀茂御祖神社(通称下鴨神社)で開催されている朗読劇シリーズ「世界文化遺産 下鴨神社 朗読劇 鴨の音」が、10月に「第四夜」を迎える。
すーっと楽になるというか、肉体の重さを感じなかったんですよね。場所の空気を感じたいときに、その周辺を歩くのですが、ホテルから下鴨神社まで1時間歩いて、周りの景色や生活感を感じたあとに下鴨神社にある“糺(ただす)の森”に行ってみると、僕が任された主人公の辻井秋人はこういうところで生きていたのかな?と、言葉では言い表せないような大事な感覚を得ることができました。お恥ずかしいことに、日常に当たり前にある場所だったので、ありがたみをあまり感じたことがなくて……。世界遺産とはいえ、僕にとっては近所の神社という感じで、とても身近な神様なんです。小さい頃、家族で初詣に行くと「早く帰っておいしいものを食べたい」なんて思っていましたが(笑)、楼門の前の焚き火や参拝者に甘酒が配られている風景などは、心象風景の1つです。海外に行くと、神聖な場所であっても、地域の人にとっては通学路だったりするから、きっと近くにいたらそういう感覚なんでしょうね。僕としてはこの機会に浮かれてはいられない感じがありました(笑)。というのも、僕はずっとアニメ・映像以外の現場でも声の仕事をしたいと思ってきたので、「鴨の音」ではとても集
まず、台本の構成が面白いと思いました。「第三夜」では4人の男たち(編集注:三木、置鮎龍太郎、岸尾だいすけ、小野大輔が出演)のやり取りから始まって、徐々に彼らの謎が紐解かれていきますが、観客は物語の中盤以降にそれらの人物が「彼の中にいる」と知るわけです。僕はあの物語を読んで、実は秋人の遺書から始まっているのでないかと思ったんですよね。僕らは彼が死を決めた瞬間に立ち会っているのではないかと。お客さんがどういう捉え方をするかは別として、そういった解釈をどこまで盛り込んで良いかご相談させていただきつつ、読ませていただきました。それは僕の癖かもしれません(笑)。下鴨神社でやるなら、公約数で収まる作品ではなく、僕が書いたものと下鴨神社がかけ合わさって、より良い場所を目指せるような作品にしたいと思っているのですが、そのためにまずは場の主導権を握りたい。下鴨神社には、そこで何が行われようが“揺るがない空気感”というものがあって、作り手としてはそれに対して「やってみろ」と言われているような気持ちになるんです。僕としてもあの荘厳な環境の中で繰り広げられるエンタテインメントがどのようなものか観ていただきたい