トッド・エッカート氏による「THE WORLD IN 2025」に掲載されたインタビュー記事。デジタル時代に生きるZ世代が、スクリーンからの脱却、モノの真の価値、経験重視の新しいライフスタイルを模索する中で、社会が抱える課題と未来の可能性を探求する。
世界中のビジョナリーや起業家、ビッグシンカーがキーワードを掲げ、2025年の最重要パラダイムを読み解く恒例の総力特集「THE WORLD IN
2025」。革新的なデジタル体験の研究・制作に取り組むトッド・エッカートは、デジタルが支配する世界で「モノの真の価値」を重要視する新しい世代に期待を寄せる。\映画やラジオが発明される前の19世紀末には、音楽、パフォーマンス、演説、そして虹のような自然の光景までが、はかなく、一度きりの体験だった。しかし、映画とラジオの登場により、ポップカルチャーの享受の仕方は大きく変化し、わたしたちの日常生活に深い影響を与えるようになった。\世界の主要メディア企業の多くはこの時代に設立され、創業者たちは新しいメディアに対して際限のない熱狂を抱いていた。その結果、自制をしなかった。必要ないと考えたのだ。これこそが「未来」だとされ、メディアは莫大な富を築いていった。「多ければ多いほどいい」という価値観だ。\映画やラジオは、やがてテレビに統合され、本質的なパフォーマンスからの乖離がさらに進んでいった。それと同時に、人とのつながりは計算されたドーパミンの刺激に置き換えられていった。当然、人々はその魅力に夢中になった。何もしなくても瞬時に興奮を得られるということは、明るい未来を予感させるものだった。しかし、個々のデバイスへのストリーミングが普及すると、収益性の追求と引き換えに、人々の満足度は逓減していった。共感性の喪失、不安の急増、社会的な不適応が、人々の経験の中核となっていったのだ。\結果として社会全体に不調がもたらされたが、2025年には社会の一部でスクリーン依存からの離脱が徐々に始まるだろう。この変化のリーダーになるのは、Z世代のデジタルネイティブたちだ。Z世代にとって、テクノロジーを介さない交流のシンプルさは、かつてのテクノロジーの進歩と同様の新鮮さを呼び起こすはずだ。\シンプルさへと向かう本能\現在13歳から27歳のZ世代は、デジタル依存に最も深く影響を受けている世代だ。インターネットの発明とともに生まれ、その影響を受け続けてきたことで、世界を生き抜く手段まで主にデジタルに依存している。人々の間の真のつながりは、学校の課題や指導や助言を受ける場面で希薄化し、日常生活をナビゲートする平凡な情報もすべてアプリに委ねられている。スクリーンに支配され、制度化された社会では、制約ばかりが強調されてしまう。現状は、それを乗り越えるための経験的な学びが欠如している。\とはいえ、Z世代の本能は別物だ。Z世代の本能は、現代社会の変化を引き起こす大きな力に進化しつつある。現代社会で大きな課題となっている「モノの真の価値」はZ世代にとって重要なテーマであり、特に優先順位を決める要素となっている。Z世代は高価な新しいメディアよりもユーザー生成コンテンツ(UGC)を重視し、短期的な物質主義よりも、経験から得られる長期的な意味を求めている。最近ギャラップが米国で実施した調査によると、回答者の50%以上がテクノロジー企業、政府、司法制度を信頼していないと答えている。\Z世代は「過少消費コア(underconsumption core。必要以上の消費を避けること)」や「デ・インフルエンシング(de-influencing。買うべきではない商品について伝えること)」といったトレンドを受け入れ、これまで畏敬の念を抱かせていたメディアに対して疑問を投げかけている。そして、前の世代を恐れさせるような新たなワークライフバランスを求めている。これらはすべて、社会にとってポジティブで重要な進展だ。\だからこそ、2025年にはZ世代がテクノロジーを超えた人間の交流のシンプルさを受け入れる次のステップに進むと信じている。画面を必要としない現実のなかにその鍵があることを、Z世代は理解するだろう。それは新鮮な驚きであり、初期の映画のように基本に立ち返る行為だ。いまや支配的なデジタルライフのなかで、どんな本質的変化が起こるのかは予測不可能であり、恐ろしい。しかし、その変化の先は非常に人間的であり、オンラインでは得られない価値がたくさんある。これこそが、わたしたち人間がもつ混沌とした本質だ。スクリーンからの撤退の美徳が称賛され、Z世代がその先頭に立つだろう。
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