全米自動車労組(UAW)のショーン・フェイン委員長は、米ミシガン州デトロイトに拠点を置く大手自動車メーカーに対する勝利を自ら主張した後、次にどこにエネルギーを注ぐかを明確にした。
フェイン委員長は29日、「この歴史的な労働協約合意を勝ち取ったことで生まれた最大の目標の一つは、これまでに実現することがなかったような組織化を図ることだ」と発言。「2028年に交渉のテーブルに戻るときには、ビッグ3だけでなく、ビッグ5やビッグ6と協議することになろう」と表明した。だ。同社は時価総額で世界一の自動車メーカーでありEV最大手で、カリフォルニア、テキサス、ネバダ、ニューヨークの4州で計数万人の非組合員を雇用している。
事情に詳しい関係者によると、カリフォルニア州フリーモントの約2万人が働くテスラの工場では現在、UAW組織委員会があり、メンバーが同僚に団体交渉の利点について説明している。UAWはこの取り組みに必要な資源は何でも提供すると約束しているという。UAWに支出計画についてコメントを求めたが、返答はなかった。 テスラで労働組合を結成すれば、UAWの組合員数を増やすだけでなく、業界がEVにシフトする中で、組合の影響力発揮に役立つ。フリーモント工場の元従業員で、20年に退職する前にテスラで組合結成運動に関わったマーク・エバリー氏は「UAWはテスラにも踏み込みたいだろうが、彼らに勝ち目があるとは思えない」と話した。
フェイン委員長には、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)という強敵がいる。マスク氏はほぼ無限のリソースを持ち、法的脅しや注目を集める論争にもひるまない。エバリー氏が取り組んだ労組結成運動が押しつぶされたのも、マスク氏の激しい抵抗があったからだ。テスラ幹部とマスク氏に電子メールで取材を試みたが返答はなかった。 フェイン委員長はフォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)、ステランティスとの交渉で、記録的な賃上げと401退職給付の強化などの譲歩を勝ち取った。今月初めには「自動車業界の何千人もの非組合員がわれわれの運動に参加したいと手を差し伸べてくれた」と語っており、テスラとトヨタ、ホンダの労働者を 「未来のUAWメンバー」と呼んでいた。
UAWの現メンバーの中には、すでにテスラへの挑戦に燃えている者もいるが、組合員との関係が確立している企業と労働協約を巡り闘うのと、ゼロから始めるのとでは全く異なる努力だ。テスラで以前に組合活動で重要な役割を果たした複数の労働者は、もはや同社には在籍していない。