【コラム】オリックス山崎颯一郎「この傷が勲章に」右肘手術…苦難越えてプロ初登板 山崎颯一郎 npb Bs2021 Orix_Buffaloes
「今まで、考えたこともなかったですよ。骨がどう、とか。筋肉がどう、とか。神経がどう、とか…」
いつも明るく無邪気な山崎颯が、ポツリと言った。「実際、見てみないと、わかんないですよね…」。ふんわり着ていた黒色パーカーの袖をまくった。力こぶを作るように腕を曲げ、右肘の内側を見せる。「もう、痛くないんですよ。この傷が、勲章になればいいんですけどね…」。そっと添えた左手の親指で、ぷっくりと膨らんだ手術痕をなでる。満足に野球ができない状態で迎えた、昨年2月の宮崎春季キャンプ。右肘が上がらず、思うようにキャッチボールができない。悲痛な叫びだった。「投げた瞬間に『ブチッ』って右肘が鳴ったんです。何が起こったか、全然わからなかった。突然、力が全く入らなくて…」。その場でうずくまった。1度は投球練習を試みるも「ボールが握れなかったんです…」と冷や汗が止まらなかった記憶がある。
首脳陣やトレーナーと相談し、その年の8月には右肘内側側副靱帯(じんたい)再建のためトミー・ジョン手術を受けた。待っていたのは入院、リハビリ生活…。「気持ちが折れることはなかったです。同期(入団)の黒木さんの存在も強かった。いろいろ相談できるので。1人でやるより仲間がいたほうが心強かった」。同時期に同箇所を手術した黒木も、リハビリに励んでいた。決して下は向かない。大阪・舞洲の球団施設で顔を合わせると、いつも明るく振る舞った。「正直、キツイっすよ…。でも、頑張ります!」。短い会話からも、あふれる思いが伝わってきた。甘いフェースが注目される高卒5年目右腕は、苦難を越えて、1軍マウンドに立った。5月1日のソフトバンク戦(京セラドーム大阪)でプロ初登板。7回に3番手で救援登板し、1回1安打無失点。「暑くないのに、汗がすごく出た。緊張してるなと自分で思いながら。そっちの方が楽で。緊張しないようにと考えると、どんどん緊張してしまうので、割り切っていけました」と独特の緊張感を楽しさに変えた。ブルペンで投球準備を伝えられた際は「よっしゃ、来た! やっと、出番きた!...
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