イーロン・マスクは、自身が率いる政府効率化省(DOGE)が、150歳の人々が社会保障給付を受けているという事実を発見し、大規模な政府の不正を暴いたと主張している。しかし、マスクは自身の主張を裏付ける証拠を一切提示していない。専門家らは、政府の支払いシステムの基盤となっている何十年も前のプログラミング言語特有の仕様によるものである可能性が高いと指摘している。
イーロン・マスク は、自身が率いる政府効率化省(Department of Government Efficiency、 DOGE )のプロジェクトが、150歳の人々が 社会保障 給付を受けているという事実を発見し、大規模な政府の不正を暴いたと繰り返し主張している。 しかし、マスクは自身の主張を裏付ける証拠を一切提示していない。これに対し専門家らは、政府の支払いシステムの基盤となっている何十年も前のプログラミング言語特有の仕様によるものである可能性が高いと、すぐに指摘した。 マスクの主張と専門家の反応 マスクは先週、ホワイトハウスの大統領執務室で開いた記者会見で、初めてこの主張を展開した。「 社会保障 制度をざっと調べたところ、150歳の人々の情報が見つかりました。みなさんには150歳の知り合いはいますか? わたしにはいません。ギネス世界記録に載っていてもおかしくないはずです……。つまり、この人たちはおそらくもう亡くなっていると思います」と語った。 マスクの主張を裏付ける証拠は一切示されなかったものの、マスクが所有するXのサービスを中心に右派の論評家たちがこの話題を取り上げた。また、トランプを支持するメディアも報道した。 コンピュータープログラマーたちはすぐに、「150」という数値は不正の証拠ではなく、米 社会保障 局(SSA)の給付システム特有の仕様によるものだと指摘した。このシステムは、60年前のプログラミング言語であるCOBOLで主に構築されている。COBOLは多くの米国政府機関のシステムに使われてきた。 しかし、COBOLは現在ではほとんど使用されていない。そのため、マスクが抱える若手エンジニアチームはこの言語を知らない可能性が高い。 COBOLには日付型がないので、一部のシステムではすべての日付を特定の基準日に基づいてコード化する方式が採用されている。よく使われる基準日のひとつに1875年5月20日があり、これはパリで主催された単位の確立と普及を目指す国際会議「メートル条約」の開催日である。 これらのシステムでは、生年月日が未入力または不完全な場合、基準日が自動で適用される。このことから、2025年時点で該当データはすべて150歳と表示されるというわけだ。 これは、 DOGE が発見したとする状況について考えられる説明のひとつにすぎない。実際には、マスクはSSAのウェブサイトを確認するだけでよかった。そこには2015年9月以降、115歳に達した時点で給付金の支払いを自動的に停止すると明記されているのだ。 社会保障 データベースの記録 しかし2月17日の朝、マスクは続けて「 社会保障 データベース」の数字だと主張するスクリーンショットをXに投稿した。「各年齢層において死亡欄がFALSEになっている人数を見て! 」とマスクは書き込んでいる。このデータによると、120歳以上の1,000万人超が給付金を受給しているとされていた。 「もしかすると『トワイライト』は現実の話で、多くのヴァンパイアが 社会保障 給付を受けているのかもしれない」とマスクは投稿している。 マスクがスクリーンショットを取得したデータベースには約4億人の情報が登録されている。SSAのウェブサイトによると、この数は2024年に給付金を受けている人数の5倍以上にあたる。また、米国の人口をも大きく上回っている。 社会保障 システムに数百万件もの死亡者情報が残されている問題は、COBOLによるとみられる状況とは異なる事象であり、以前から知られている。2023年にSSAの監察官が作成した報告書によると、 社会保障 データベースに登録されている100歳以上の人物の98%は給付金を受け取っていない。さらに、データベースの更新には莫大な費用がかかるため、更新は実施しないと報告書には記されている。 「 DOGE は、ほぼ無制限のアクセス権をもち、破壊的なやり方で政府機関に介入しています。しかし、コードやデータベース、業務上のロジック、関連する支払いシステム、意思決定プロセスなど、背景にある仕組みや構造を理解していません。このことは、各機関の記録に含まれる何百万件もの個人情報やプライバシーに深刻なリスクをもたらします」と、米国家安全保障局(NSA)の元幹部で内部告発者のトーマス・ドレイクは『WIRED』に語った。 削減したコストの詳細 マスクは息子も同席した大統領執務室での記者会見で、150歳の人々への給付は、 DOGE がすでに発見した数十億ドル、場合によっては数百億ドルにのぼる汚職や無駄遣いのほんの一部にすぎないと主張した。 しかし、ガザへのコンドームの送付や『Politico』への支払いと同様に、マスクの 社会保障 詐欺に関する主張は、実際に起きていることとその背景を大きく誤って解釈したものと思われる。 マスクは150歳の人物が 社会保障 給付を受けていると発言した同じ記者会見で、 DOGE のプロジェクトは最大限の透明性を保てるよう、削減したコストをすべてウェブサイトに公開すると話していた。しかし、先週公開されたサイトのページは、Xのフィードを流用しただけのものだった。さらにセキュリティは極めて不十分で、経費削減の実績を示すはずのセクションは空欄のままだった。 当初、サイトの管理者は経費削減の詳細を2月14日のバレンタインデーまでに公開すると約束していた。しかし、その期限を過ぎても更新はなく、代わりに『詳細は週末に公開予定!』という投稿があっただけだった。15日に一時的に情報が掲載されたものの、すぐに削除され、17日の本記事原文執筆時点でも詳細は公開されていなかった。 「国民を欺くような手法で、借金によって調達された資金が、一部の人々にさらに集中することを懸念しています。この人たちは公共の利益ではなく、権力と私欲に基づいて動いているのです」とドレイクは語る。「民主主義は真に危機的な状況にあります」 DOGE とホワイトハウスにマスクの主張について問い合わせたが、回答はなかった。 (Originally published on wired.
com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko Nakano) ※『WIRED』によるイーロン・マスクの関連記事はこちら。 Related Articles 『WIRED』の「THE WIRED WORLD IN 20XX」シリーズは、未来の可能性を拡張するアイデアやイノベーションのエッセンスが凝縮された毎年恒例の大好評企画だ。ユヴァル・ノア・ハラリやオードリー・タン、安野貴博、九段理江をはじめとする40名以上のビジョナリーが、テクノロジーやビジネス、カルチャーなど全10分野において、2025年を見通す最重要キーワードを掲げている。本特集は、未来を実装する者たちにとって必携の手引きとなるだろう。 詳細はこちら。
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