今や米欧の関係は、欧州＆ウクライナ、米国＆ロシア、という2対2の構図になりつつある。こうした状況下にありながら、実際の相場に目を移せば、欧州経済は下落するどころか真逆のことが起こっています。その理由をエコノミストが考察します。
EU27カ国のほとんどが加盟する北大西洋条約機構（NATO）は、加盟国に防衛費を名目GDP（国内総生産）の2%まで引き上げるようかねてより要請していた（図表2）。それに米トランプ政権からの突き上げが加わり、EUとイギリスの防衛費の増額はいよいよ待ったなしの状況となっている。こうした状況を受けて、3月2日にイギリスの首都ロンドンで緊急の首脳会議が開催され、欧州各国の首脳らが防衛費を増額することで大筋合意に達した。この首脳会議にはカナダのトルドー首相も参加し、またウクライナのゼレンスキー大統領も招かれている。3月6日にはEUの執行部局である欧州委員会が、防衛費増額に向けた具体的な案を出すようだ。
健全財政を重視するEUでは、防衛費の増額と歳出の抑制との兼ね合いをどうするのかというテクニカルな問題に直面する。特にドイツの場合、債務ブレーキと呼ばれる厳しい財政運営のルールが、憲法に明記されていることで知られる。ドイツは、2月23日に総選挙を行ったばかりで、まだ新政権が成立していない状況でもある。 とはいえ、防衛費の増額は喫緊の優先事項であるため、EUはどうにかして防衛費の積み増しの道を切り開くはずだ。そうなると、軍需産業が活況を呈することになる。そうした思惑から、軍需関連株が積極的に買われ、株価の押し上げ要因となった。加えて、ECB（欧州中央銀行）による利下げやAIブームなども、株価の押し上げ要因になっている。
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