職務質問のプロ集団 警視庁自動車警ら隊 犯罪者は「浮いてみえる」 不自然に腕を振って歩いていたり、信号待ちで落ち着きがなかったりすれば、すかさず車を止めて声を掛ける。 「犯罪に手を染めた人は浮いてみえる」と話す隊員も少なくない。
目前に控えた東京五輪・パラリンピック。不測の事態に備え、不審者の早期発見は不可欠で、職務質問の役割は重要になる。その職務質問のプロ集団が警視庁にいる。車によるパトロールを専門とする警視庁自動車警ら隊(自ら隊)だ。
隊員は車内から歩いている人の服装や目の動きなどに細心の注意を払う。「薬物中毒者や反社会勢力には独特の雰囲気があり、発覚を逃れるために必ず体のどこかが反応する。その瞬間を逃さない」。第1自ら隊の沓澤(くつざわ)良信警部補(54)はこう力を込める。不審点を見逃さない瞬時の観察力と、犯罪をかぎ分ける勘が求められる自ら隊員。不自然に腕を振って歩いていたり、信号待ちで落ち着きがなかったりすれば、すかさず車を止めて声を掛ける。培った経験から「犯罪に手を染めた人は浮いてみえる」と話す隊員も少なくない。 「明らかに様子がおかしい」。今年4月、渋谷区の路上を歩いていた2人の若い男からにじみ出る「違和感」を、第1自ら隊の小松崎崇(たかし)巡査部長(44)は見逃さなかった。声を掛けると、男たちは足が震え、動きもぎこちない。「話すこともころころと変わり、薬物犯で間違いないと確信した」。すぐに所持品の提示を求め、乾燥大麻を発見。大麻取締法違反で逮捕した。大学に入学したばかりの学生だった。
職務質問はあくまでも任意で、市民の協力なしには成り立たない。「時間をもらい迷惑をかけてしまうし、財布やポケットなど相手のプライバシーにも踏み込み、嫌な思いをさせてしまうことも多い」と沓澤さん。声を掛けられたことを快く思わない人から、罵詈(ばり)雑言を浴びせられることも少なくない。小松崎さんは「職務質問は感謝の気持ちと誠意をもってやることが大切。ただ、犯罪者の『ゴネ得』は許さない」と話す。