巨人が2試合連続の逆転勝ちで、3位・DeNAと2差に縮めた。
病み上がりの男が意地をバットに込めた。1―3の5回2死一、二塁。梶谷隆幸外野手(35)はカウント1―1からサイスニードのチェンジアップを右前へはじき返した。「つないでくれたチャンスだったので、何とかしたかった。ランナーをかえせて良かったです」。発熱による抹消から1軍復帰後初スタメン初適時打。一塁に到達すると、手を叩き右拳を突き上げた。8月2日・ヤクルト戦(東京D)以来1か月ぶりとなる今季3度目の猛打賞も記録し、1番打者としてチームの力になった。
35歳最初の試練が訪れたのは、誕生日翌日だった8月29日。39度1分の発熱で、特例2023の対象選手として同日に出場選手登録を抹消された。「かなりヤバかった。しんどくて何も食べられなかった」。体重も2キロ減るほどだったが、9月1日・DeNA戦(横浜)の試合前練習で復帰し、翌2日の同戦で再登録。7試合ぶりのスタメンに燃える思いも持ち合わせつつ、「基本的に塁に出ることしか考えていない。もちろん長打も打ちたいですけど、欲を出すと率が下がる」と不動心で打席に向かった。 「技術の感覚は全然大丈夫」と0―1の4回先頭では中前打を放っており、一時同点へのきっかけをつくっていた。2―3の8回先頭でも外角低め変化球を中前に運ぶ技ありの安打をマークしており、これも同点につなげた。この日は同学年の坂本が体調不良のため特例で出場選手登録抹消。主力が一時的に抜けた穴は大きいが、チーム一丸でカバーする思いで、3安打全て得点に絡む仕事を果たした。
原監督はベテランの働きに、「存在感がありますね」と目尻を下げた。8月は65打数22安打で打率3割3分8厘を記録しており、9月一発目のスタメンでも上々の滑り出し。試合後の「疲れた」という言葉にも、充実感がにじんでいた。(田中 哲)