ゴシックホラーの帝王ができるまで。
は、隠密行動に優れたちょっと変わった男ですが、その実は100年を生きる吸血鬼。マインドフレイヤーの幼生を得たことで、日中でも問題なく活動できるようになっていて、一部の制約は幼生によって消えてはいるものの、鏡に映らないため自分のイケメン振りが確かめられないのがご不満の様子です。
自分を奴隷にしたカサドールへ復讐するため、リスクを負ってでも危険な力を積極的に活用するよう薦めてきます。危なっかしさが言動からにじみ出てきますが、彼もなかなか大変な人生を送ってきたようで、復讐に手を貸してやるのも一興です。血を吸う怪物という広義の「吸血鬼」は世界各地に古くからの伝承が残りますが、蘇る死者、杭を打ち込むという要素を持ったキリスト教伝来以前から残る民間伝承で、死者が墓を抜け出して動くというものです。伝承がある地域では死者の棺を数年後に開け、不審な点が見つかればニンニクを詰め、手足を切断し、杭を打ち込んで動かないようにする風習がありました。 実際に人間が死んで墓に入ったものを掘り返すと、時折朽ちずに残ったり爪や髪が伸びているもの、口の周りに血が付いているものが見つかります。これらの現象は現代の科学で説明でき、内臓が腐敗してガスが逆流すると口から残っていた血が噴き出します。中世の人は遺体は埋めた状態で動かずに朽ちていくと考えるので、そうした現象は死者が生き返って行動した結果だと思うのです。
目に見える形で存在する「吸血鬼」現象は当時の人々にとって大きな恐怖だったに違いありません。ブルガリアでは700年前の人骨が歯を抜く、鉄の棒を刺すなどの「処理」された状態で発見されています。しかし中世の頃までは東欧の外にまで知られるような注目はされていませんでした。です。1718年にトルコとの戦争に勝利してセルビアとワラキアを割譲させたオーストリアは、統治に当たって現地の情勢を調査します。その中で取り上げられたのが墓の掘り返しの習慣でした。ペストや天然痘が流行している中で、人々は吸血鬼に原因を求めて墓荒らしを行っていて、オーストリアはこれを悪しき習慣として問題視します。