「魂のピアニスト」と呼ばれ、聴覚障害を持ちながらもリストやショパンの演奏で聴衆を魅了したピアニストのフジコ・ヘミング(本名=ゲオルギー・ヘミング・イングリット・...
「魂のピアニスト」と呼ばれ、聴覚障害を持ちながらもリストやショパンの演奏で聴衆を魅了したピアニストのフジコ・ヘミング(本名=ゲオルギー・ヘミング・イングリット・フジコ)さんが4月21日、死去した。92歳。葬儀は近親者で行った。関係者がお別れの会を検討している。
日本人ピアニストの母とロシア系スウェーデン人の画家で建築家の父の間に、第二次大戦前のベルリンで生まれた。5歳で日本に移り、東京音楽学校(現東京芸大)在学中に新人音楽家の登竜門「NHK毎日コンクール」に入賞するなど数多くの賞を受けた。 混血ゆえの差別や国籍喪失などの苦難も経験し、赤十字の「避難民」として渡独。ベルリン音楽学校に留学し、米作曲家で指揮者のレナード・バーンスタインに才能を認められた。しかし、名門ホールでのデビュー直前に風邪をこじらせ、耳が全く聞こえなくなった。失意の中でスウェーデンに移住し、耳の治療の傍らピアノ教師をしながら欧州各地でコンサート活動を続けるなど、希望を捨てずにピアノに向かい続けた。
その波乱の人生を描いたNHKのドキュメンタリー番組が平成11年に放送されると反響を呼び、同年発売されたCD「奇蹟のカンパネラ」は200万枚を超えるクラシック界では異例の大ヒットを記録。2001年には米ニューヨークのカーネギーホールでリサイタルを開いた。 公演活動で多忙を極める中、米同時多発テロの被害者救済のために1年間、CDの印税を全額寄付。東日本大震災の復興のためにチャリティーコンサートを行うなど支援活動にも尽力した。90歳を過ぎても精力的に演奏活動に取り組んでいた。