悲鳴と歓声が入り交じった。偉業にあと一歩、届かなかった。打球が中前まで抜けると、戸郷は首をかしげて視線を落とした。1―0の9回1死二塁。小園を2球で追い込んだが外角に逃げるフォークを捉えられ、中前へ
の同点打を許した。8回1/3、114球で5安打1失点。18年菅野以来プロ野球6年ぶり、24歳シーズンでは89年斎藤雅樹以来チーム35年ぶりの3試合連続完封をあと2死から逃し、「大事な一戦だったので、勝ちきらないといけないところを落としてしまって本当に申し訳ない気持ちです」と頭を下げた。
エースの仕事だった。負けるわけにはいかなかった。首位・広島と1勝1敗で迎えた天王山3戦目。「一番大事なことは分かっていた。完封ももちろんしたいけど、チームの勝ちを一番意識しながら全力でいきたい」と力が入った。9回にも2度計測した最速149キロの直球にフォーク、スライダーを駆使して3回まで無安打。走者を出しても淡々と腕を振り、8三振を奪いながらゼロを並べた。杉内投手チーフコーチも「気合が入っていたので戸郷に懸けた」と託したが、最後につかまった。「最後の小園のところも、もっと厳しくいけましたし、そういうところが負けにつながったかなと」と責任を負う右腕の肩を、仲間たちがそっと優しくたたいた。 ここまでチームを幾度となく救ってきたが「僕自身、エースだとまだ思ってない」という。一方で「高校の時は多少偉ぶっていることとかもあったと思う。甲子園も出てプロにもいけるかなとか、思ったこともあったと思う」と振り返る。小さな自信が打ち砕かれたのは、偉大な先輩たちの立ち居振る舞いを見たから。「菅野さんを見て、レベルの高さを感じた。きつい時ほど粘って勝つのがエースだと思う」。どんな時でも勝ちきるのが真のエース。あと一歩で勝利を逃した自分に憤りを感じながらも、さらなる成長を遂げると誓った。
3年連続2ケタ勝利も持ち越しとなった右腕は「あと何試合投げるか分からないですけど、全て勝つ気でいかないといけない。借りは返さないといけない」と拳を握った。逆襲に燃えるエースは、リベンジの機会を待つ。(水上 智恵)
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