1969年生まれ、東京都出身。雑誌を中心に、テレビ、ラジオ、インターネットなどメディアを横断して映画評論を行うほか、アートディレクターとして書籍の装丁、CD・DVDのパッケージデザイン、映画ポスターなども手がける。著作は映画評論集「悪魔が憐れむ歌」シリーズなど多数。2022年には初長編監督作「激怒」を発表した。
人生のすべてを奪われた若きフュリオサが、2人の独裁者が覇権を争う狂気に満ちた世界と対峙する物語。前作がわずか3日間の出来事を圧巻のスピードで描いた一方、今作はフュリオサの怒りが充満する15年間にも及ぶ叙事詩となった。バイオレンス・カーアクション・ムービーとして誕生し、1979年に第1作が公開された「マッドマックス」シリーズ。当たり前のように犯罪が許され、核戦争や石油危機に見舞われた世界を舞台に、復讐心に支配された警官マックスがアンチヒーローとして君臨する姿が描かれてきた。その彼の内に眠る“怒り”は2015年、ウェイストランドを舞台とする「マッドマックス...
さて本作は原題に「A Mad Max Saga」とあるように、「英雄伝説」や「叙事詩」の一部であることを非常に強く打ち出した作品だ。ジョージ・ミラーはもともと神話や伝説の体系に多大な興味を寄せている監督で、「40,000 Years of Dreaming」(1997年)というドキュメンタリー作品では自分の「マッドマックス」を含むオーストラリア映画の歴史そのものを神話的な物語構造の中に位置づけてみせたし、2022年の「アラビアンナイト...
「マッドマックス」シリーズの新作を9年ぶりに発表したジョージ・ミラー。(写真提供:Abaca Press / Reynaud Julien / APS-Medias / Abaca / Sipa USA / Newscom / Zeta Image) 「フュリオサ」はその重層性もまた驚愕に値する。表面的なストーリーはそれを総体として見る限りそれほど複雑ではないが、ひとつひとつのエピソードがそれこそフラクタル図形のように意味の入れ子構造となって相互に絡み合っており、そのことが〈驚異の感覚〉をより際立たせている。観客に突きつけられるのは無数の要約不可能なアンビヴァレンスだ。たとえば、これは絶望の物語なのか、それとも希望の物語なのか?というようなシンプルな問いかけすら本作には適用できない。幼くしてかどわかされたフュリオサは、過酷極まりない環境でサバイバルすることで「強く」なったのだろうか? あるいは「壊れて」しまったのだろうか? こうした全てについて、本作は「完全なイエスと完全なノーが矛盾なく同居することが可能である」という、ほとんど悟りにも似た感覚をもたらしてくれるが、それこそがまさに〈神話〉の持つアシッドな力である。
そういう作品だからこそ、本作の言葉に対するアプローチもまた極めてユニークなものだ。乏しい語彙しか持ち得ないウォーボーイズが、それゆえに単純な概念しか理解できない、というオーウェル的な問題提起は前作「怒りのデス・ロード」でも既に示されていたが、本作では語彙や言い回しの違いがそれぞれのキャラクターの精神性だけでなく、その行動原理や哲学を端的に表すものとなっている。〈物語〉とは、〈神話〉とは、「誰が、何を、どう言ったか/それを誰が、どう伝えたか」ということに尽きるのである。©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. IMAX is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories.
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